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りんごの味

通学路の途中に大きな病院がありました。
その窓からはおじいさんが毎日手をふっています。
おはよう、おはよう。子どもたちに向かって一生懸命に。
少年は照れながらも、大きく手をふり返しました。

ある日のこと。

少年が病院の前を通り、窓の方を見ると
おじいさんが少年の方を向いて手招きをしているのがわかりました。
他にもたくさん人がいるのにどうして?
少年は恥ずかしい気持ちをおさえて窓の下に行きました。

すると、おじいさんは窓からりんごを一つ落とし
「持っていきなさい」と身ぶりで伝えたのです。
少年は「このりんごをどうすればいいのか」と途方に暮れました。
先生に事情を説明して学校に持って行けばよかったのかもしれません。
そのままランドセルに入れて家に持って帰ってもよかった。

しかし、少年はそのりんごがとても重く感じたのです。
いつもの日常生活を止めてしまいそうなほど重く・・・。
結局、少年はそのりんごを捨ててしまいました。

おじいさんのりんご。
少年のりんご。

同じりんごでも人によって味は違います。

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