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石垣の夜空、星を繋ぐ

撰石積記 voL.23 ~小さな輝きの集合~

ようやく、「星空指数 = 100」だった夜、の話

毎日のように嵐だった、2月末

 「これはキツイ…。」

 圃場をみながら、そんなことをひとりごちた。これでもかというほどに水のたまっていた。

 雨もすごいが、風もすごい。近くのダム湖は、サーフィンができそうなくらいに波が立っている。

 (これで仕事なんて、できるわけがない…。)

 案の定、雨風の影響を受けた試験圃場は、壊滅的な被害を受けた。


 連日のように雨が降り、風が吹き。

 そのたびに試験圃場の現状復帰作業をする。


 「ココロが死んでますよ。」

 電話で妻に、つい愚痴をいってしまう。

 こんなはずではなかったのに、困ったものだ…。


 もう、帰ってしまいたかった…。

 そんなこんなで、毎日天気が悪く…。

 星空どころでは、なかったのだ…。


たのしみなこと


 それでも、ここまではやってこれた。それはいつもと違う場所にいるという、充実があったからだ。


 引き潮の海岸から見る夕焼けの水平線。

 電線にとまる、カンムリワシ。

 脂がすごかった、テビチ。

 見飽きるほどにみた、サトウキビ畑。


 どれも、面白かった。

 どれも、いい体験だったのだが…。


 一番は、やはり。

 星空だろう。


 ようやく、きのうの夜に。

 それが見えた。


星空を求めて


 石垣島北部地域は、「星空保護区」に指定されている。

 星空保護区の説明は、他サイトから抜粋する。

*****

星空保護区とは、簡単に言うと、世界的な天文学者が集まる教会が、人工の光の影響が少なくて、星空が綺麗な場所や地域を世界規模で評価して保護しよう!っていう取り組みの事。ただ、星が綺麗に見れる環境を評価するのではなくて、その地に住む人が夜の環境を守る取り組みなども評価するようです。なので、世界遺産の様な認定制度と言ったほうが分かりやすいと思います。

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 要するに、星空がみやすい地域ということ。それを知ってから、米原海岸近くの宿をとることに決めた。もう一度、星空をみたいと思ったからだ。

 昔、仲間とキャンプに行ったとき、山奥の林道を進んでいった先で、夜空を見た。その時に初めて、”星空”を知った。


 その時は、夜の雲間にみた星空だったが…、みごとだった。

 もう一度、みてみたかった。


[星空指数 = 100]

 日本気象協会のHPで、星空指数が公表されている。詳しい算出はわからないが、とにかく100が一番いい。

 「星空指数 =100」、それが昨日の夜だった。

 これまでも何度が「星空指数 =100」の予報の日があったのだが、実際には薄曇りだったりして、きれいに見えなかったのだ。とにかく、天気は悪い日が多かったし、天気予報もあてにならない天候不順だった。


 でも、きのうは雰囲気が違った。

 昼間からずっと天気がよかったのだ。

 「これはいける」

 そう思って、待ち構えた。


真黒の中の光点をつなぐ


 ウィークリーマンションは屋上に出られるようになってる。そこにもうボロボロになった椅子があって、それに座って星空をみようと、決めていた。

 19:30 を過ぎ、ようやく明るい星が見え始めた。まだ西の空はぼんやりと明るく、小さな星はほどんど見えなかったので、出直すことにした。

****

 21:30 ベランダから外を見ると、北斗七星が見えた。

 ようやくか、と外に出て階段を上る。


 そして、ついに屋上で見た景色に。

 息をのんだ。

*****


 数えきれないほどの星が、真っ黒な空で輝いていた。

 今までに見てきた夜空とは、まったく違う、星空だった。



 光る星ひとつの周縁が、さらにぼんやり光って見える。そのせいだろうか、一つの星が大きく見えた。そして、ひとつひとつの星が、その周縁の光を通じて繋がっているようだった。

 この風景をみえれば、”星座” という概念がうまれるのも、得心がいく。


 ひとつひとつが

 こうも美しく、

 繋がっていくのか…。


 あまりにきれいに輝くせいで、数少ない既知の星座である”オリオン座” に気が付くまで、時間がかかってしまった。


これが宇宙か…。


 しばらくの間、夜空を見上げてからふと思う。

 「自分はなんて、小さな存在なんだろうか。」


 天気が悪いせいで、仕事がうまくいかなくて。

 そんなのは、世界や宇宙の大きさに比べれば、

 なんとも些末なことだ。


 あー、なんだか、どうでもよくなってきた。

 ありのままを受け入れれば、それでいいじゃないか。これまでもやれるだけのことをやってきたのだから。


 「楽しめ」


 なんだか、そんな声が聞こえた気がした。

 そんな声を聴いた気分に浸っていると、手に持った缶ビールなんて、もはや必要なかった。


*****

 輝き続ける星の下で。

 きょうも仕事をする。



 今日はなんだか。

 仕事がうまくやれそうだ。



 *****

 カーテンから朝のうすい光が入り始めた。

 そうか、夜が終わったか…。



 さて…、きょうもがんばりますか。

 しわくちゃの布団を、整え始めた。


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