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ひと段落の仕事と、石垣の夜

 ひさしぶりに一人居酒屋、の話。

 石垣島での仕事も、あと8日。最後の山場は残すものの、大方の仕事は見通しが立った。来客の予定もあと一件となった。なんだか表情が、緩んだような気がする。

 ようやく、ここまできたか…。

ひとがいる、というアリガタミ。

 きのうから、石垣港周辺の市街地に宿を移した。島の北側の生活はよかった。が、そろそろそれにも区切りをつけよう。人間の文明を感じる生活に浸らないと、現実との乖離に悩まされることになる。

 まぁ、現実との乖離云々は大げさだ。

 とはいえ、これまでの時間の中で、”少々不便でもそれゆえに得られること” のアリガタミには十分触れた。だから今度は、ひとがいる、ということのアリガタミを感じようと思ったのだ。

 実際、きのうひさしぶりに宿を周辺をブラッと散歩してみた。

 きのうの宿は離島ターミナルのすぐそばだったので、飲食街も近かった。2月中旬に来た頃よりも、だいぶんにぎわってきたような気がする。観光客も増えている(ついでに、コロナも) らしく、レンタカーが走っている様子もよく見るようになった。

 ここ数日、ずいぶんと蒸し暑い日が続いていて、夕方でも散歩には不向きに思えるところではあった。ただ、それでも…、それでもなんだか、ホッとした。

 ひとがいることで、ホッとするなんて、なかなかない経験だった。

 これまでほとんど、ひとの気配を感じない生活だったせいだろうか。マスクを着けた観光客のカップルが道を歩いているだけで、なんだかココロが落ち着くような…、妙な心地だった。

”石垣ブルー” を求めて

 きょうは、ひさしぶりに一人居酒屋に挑戦(?) してみた。いつ以来だっただろうか。結婚してから、それをした記憶がない。5年ぶりくらいか。

 『なんとしても、居酒屋で酒を飲みたい』という強烈な願望があったわけではない。たまたまだ。

 以前、同僚に連絡した際に、「全然業務と関係ないんですけど…」と前置きの上で、勧められた。

 「ここにいってみてください、めっちゃいい店なんでっ‼」

 と、なぜか強く推してきたのだ。そこまで言うなら…と、しかたなく、行ってみることにしたのだ。店の名前は、”石垣ブルー” 。公設市場の近くで宿からも近かった。

*****

 そしたら、どうしたことか。店の前には張り紙があった。

 「3/27 ~ 4/5 休業します」

 なんと、こまった…。

*****

 不思議なもので、そんなに居酒屋に行きたいと思ったわけでもなかったはずなのに、「いけない」とわかると、急に惜しくなるのだ。

 それから、しばらく、ひとりでも入れそうな居酒屋を求めて、夜の石垣をさまよい歩くことになる。

さまよった先で

 休みであるというなら、帰ればいいのだ。

 でも、そうしなかったのは…。なんでだっただろうか。

*****

 とぼとぼと中途半端に歩き回る、そのうちに一軒の居酒屋を見つけた。外からみると50席ほどの店内で、半分程度は埋まっている。

 ここにしよう。店の扉を、開けた。


 初めて一人でスナックに行った時もそうだった。夜の店の扉を開けるのは、意外と緊張するのだ。

 そんなストレスを感じる必要がないのに、

 どうしてそこに、行きたいと思うのだろうか。

*****

 結局、だれかと話をしたかったからだ。

 だれでもいい。

 もちろん、それがきれいなおねぇさんであれば、なおいい。


 そんな風に思えるなんて、自分も変わったな。

 ひとりが好きなのだと思っていた。


 石垣の夜は、そんなことに気づかせてくれる。

*****

 扉を開けて店内に入る。

 泡盛の瓶がきれいに並び、沖縄らしさを感じさせる店内。酔客(大阪弁の中年女性) の声が響いている。

 間を置かず、奥から店員の方が声をかけてくれる。


 たのしい夜の、始まりだ。

 残りの時間で、やりきってやろうっ!!

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撰石積記 voL.42 ~夜の街の邂逅~

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