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私たちの町に、無名の画家たちの拠点をつくろう

画家とはもちろん絵を描く人たちのことですが、人間の魂へ給するパンをつくりだす人々でもあります。ゴッホやセザンヌの絵は、なんと大きな生命の力を私たちの内部に送り込んでくることか。この魂のパンづくりをする画家たちの大半が、画家としての市民権を獲得していません。そしてこの地上に永遠に残すべき珠玉の絵画を描きあげても、彼らが死去するとゴミ同然として廃棄されていきます。なんという損害、なんという損失でしょうか。
 
わが町の住人、周藤佐夫郎さんは65 歳のとき、旋盤で工作中に金属の破片が左目に突き刺さり失明しました。周藤さんが水彩画を描きはじめたのはその時からです。それから三十四年間、99 歳になった今もなお営々と絵を描いています。その間、三度の個展を開き、百点もの作品を載せた画集も発行しました。人々を励ますこの周藤さんの何百点もの絵もやがてゴミとなって捨てられていくのでしょうか。
 
塩谷陽子さんは「ニューヨーク──芸術家と共存する街」という本で、次のような提案をしています。「芸術は、教育や福祉とまったく同じに、コミュニティーが責任をもって扱う課題だとみなすべきである」と。「芸術に対してコミュニティーが、教育や福祉の問題と同じレベルで責任をもつということ、そして芸術を援助するということの意味は、まずコミュニティーにいる誰もが自由に芸術にアクセスできる状況をつくり出す必要が生じるということ。さらには芸術家という人間たちを、コミュニティーを構成する多様な市民の一つであるという認識の下にとらえる必要が生じるということだ」と。
 
私たちはいま無名の画家たちの作品を展示するギャラリーを誕生させるプロジェクトを立ち上げようとしています。まずは小さな展示スペースでのスタートですが、やがてこの地に「無名画家たちの美術館」を打ち立てるという雄大な目標をもったプロジェクトです。無名画家たちの精神の拠点となり、彼らに市民権を与えて、彼らの画業を援護していく美術館です。この雄大なる目標に向かって歩んでいく仲間を募集しています。大志あふれるあなたの参戦を熱望しています。
 
99歳になった周藤佐夫郎さんの作品です。











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