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宇宙はなぜ面白いのか(ポプラ社)

 北川智子さんの『宇宙はなぜ面白いのか』(ポプラ新書 261)を読んだ。北川智子さんは、現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に勤務している。
 JAXAと言えば、つい先頃も、ニュースがあった。(2024年8月26日)今年1月に月面着陸した探査機SLIM(スリム)の運用を終了したとJAXAが発表したのだ。
 探査機SLIMの活躍は、本書の第1章でも紹介されているので、割愛するが、探査機、衛星、ロケット、宇宙望遠鏡、宇宙のはじまりであるビックバンなど宇宙の歴史や宇宙開発の歴史を時系列に、そして、論理的に説明している点は、筆者が歴史家であり、数学者だからだろう。宇宙という未知なる存在に興味を湧かせる一冊であり、子供から大人まで楽しめる一冊であることは、発行元の出版社がポプラ社だからか⁉︎

 JAXAの職員が書いた本だから、身内贔屓なのかと言うと、そうではない。むしろJAXAについては、客観的に見ている。たとえば、月面探査機で言うと、探査機SLIM(スリム)よりも早く月面に軟着陸した中国のチャンドラヤーンについても、その業績を称えている。

 そして、本書の後半では、火星探査、金星探査、木星探査など未来へのロードマップが示され、「宇宙視点」を持つことを提唱していているのだ。

 宇宙には未知なるもの、謎が多い。同じように歴史や数学にも未知なる謎があることを考えると、筆者が宇宙と出会うことは必然であった。

 そして、地球の歴史は、宇宙の歴史であり、歴史という学問の始まりは宇宙であるのだ。


 ここで、北川智子さんの経歴を紹介しよう。
 九州の高校を卒業後、カナダのブリティッシュコロンビア大学で、数学と生命科学を学び、プリンストン大学で歴史学の博士号を取得。ハーバード大学で歴史を教えた後、2012年イギリス・ケンブリッジ大学にあるニーダム研究所に客員研究員として所属。2015年から約半年間、ドイツのボンにあるマックス・プランク数学研究所の客員研究員。2016年2月よりカリフォルニア大学・バークレー校の客員研究員。オックスフォード大学ペンブルックカレッジと数学研究所で数学史の研究を進め、南アフリカのプレトリア大学に赴任。2022年4月、宇宙航空研究開発機構の宇宙教育センター長に着任。

本当に、どれひとつとっても、輝かしいキャリアである。

 僕が初めて、北川智子さんにお会いしたのは、2012年6月27日だった。ちょうどハーバード大学からイギリス・ケンブリッジ大学へ旅立つタイミング。北川さんはキラキラと煌めいていた。
 この日、北川さんの初の著作である『ハーバード白熱日本史教室』(新潮新書)の発売記念イベントが丸善丸の内本店で開催されたのである。
 僕は当時、丸善丸の内本店に勤務しており、3階の文庫・新書売場の責任者だった。当然のことながら、このイベントを仕切るのは、僕の役目であり、北川さんのアテンド、そして司会進行を僕が務めた。
 僕のMCを北川さんは、『Good job』と誉めてくれた。僕は翌日、御礼のメールを北川さんへ送った。

Dear Tomoko

丸善丸の内本店の草なぎです。

昨日は、大変お世話になりました。

当店では著者の講演会、サイン会等のイベントを年間約100回実施しておりますが、昨日のイベントは、私が経験した中で、ベスト1のイベントでした。

『ハーバード白熱日本史教室』の中で、学生に対し大学は「仮想現実」的な側面があるので、授業では「グループワーク」を課すとありました。そして「個性」と「感性」「らしさ」にこだわるとありましたが、昨日のイベントもこのことが実践され、参加したお客様も初対面同士でありながら、共同作業に取り組み、しっかりと「個性」と「感性」が活かされた発表になっていました。
まさに「白熱教室」の一部を再現したと感じました。

本当にありがとうございました。

この「グループワーク」でありながら、「個性」と「感性」を活かすというのは、私たち書店員の仕事にも通じるものがあります。
皆が協力しなければ、当店のような大型書店の運営はできません。しかし、「個性」や「感性」を活かさなければ、他の大型書店と差別化することができず、お客様に選ばれる書店にはなれません。
ベストセラーだけを追い求めるのではなく、当店ならではの珠玉の一冊を読者に提案できるように頑張ろうと思います。

もちろん『ハーバード白熱日本史教室』の販売も引き続き頑張ります。
目標は、1000冊
達成したら、また報告します。
では、お元気で
日本に帰ってきた時は、また当店にお越しください。

It would be wonderful to see you again.

丸善丸の内本店 草なぎ主税


北川さんから、すぐに返信をいただいた。

Dear Chikara,

こんなに丁寧なメールをいただき、感動です!!

今回の講演会は、本当に素晴らしい経験になりました。サポートしてくださってありがとうございました。
みなさまの真剣なお仕事ぶり、きっとたくさんの方に伝わっています!

目標は、なんと!1000冊ですか!?
ご報告をお待ちしております!!

また、次回の来日の際も、お会いできるのを楽しみにしています。

メール、本当にありがとうございました。

Best wishes,

Tomoko



そして、約束どおり、『ハーバード白熱日本史教室』を1000冊以上販売したのだ。
(2012年5月14日の発売から73日目に達成)

北川さんに連絡すると

Dear Chikara,

What a surprise!!!

素敵なお知らせありがとうございました!

とすぐに返信があった。

丸善丸の内本店のパネル


 再会をお約束していましたが、2012年12月、僕は丸善丸の内本店から横浜ポルタ店の店長への異動が決まり、横浜へ赴任。

ところが、


『世界基準で夢をかなえる私の勉強法』(幻冬舎)が2013年2月14日発売されると、そのタイミンクで来日。

そして、2月16日 横浜ポルタ店まで、北川さんは、いらっしゃったのだ。

本当に感謝。

see you again.


『ハーバード白熱日本史教室』

発売は、2012年5月14日

レポートのテーマは「タイムトラベル」! 「日本史は書き換えられなければならない」という強い使命感のもと、米国の有名大学で日本史を大人気講座に変貌させた著者による「若き歴史学者のアメリカ」。



2024年8月26日のLINE NEWS

月探査機SLIM、運用終了 3度の越夜「まさかここまで続くとは」


宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、1月に月面着陸した探査機SLIM(スリム)の運用を終了したと発表した。約2週間続く零下170度の極寒の夜を生き延びる「越夜」を3回達成したが、その後、通信を再開できなかった。

SLIMは誤差100メートル以内の「ピンポイント着陸」に世界で初めて成功。搭載した特殊なカメラを使い、当初の想定を超える10個の岩石の組成を調べた。地下のマントル由来の鉱物を観測し、月の起源の解明につながる手がかりを得た。
 当初は着陸から数日で運用を終える予定で、越夜を想定した設計ではなかった。にもかかわらず、2月、3月、4月の3回にわたって越夜に成功したことも注目を集めた。
 ただ、5月以降も通信を試みたが、応答はなく、今月23日に活動を停止させる信号を送った。大半の機器が設計で想定した期間を超えており、壊れた可能性があるという。
 JAXAは、SLIMによる月面探査で得られた成果をとりまとめ、今秋にも発表する予定だ。
 プロジェクトチームはX(旧ツイッター)で、「SLIMは多くの新たな知見を我々にもたらしてくれました。打ち上げた当時はまさかここまで運用が続くとは誰も想像していませんでした。これまでSLIMを応援いただきましてありがとうございました」と投稿した。(佐々木凌)

JAXAと丸の内


 実は、丸善丸の内本店が入居するオアゾには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の広報施設「JAXA i」があったが、2010年12月28日、閉館した。

東京・丸の内オアゾにある同館は、JAXAの情報発信拠点として、2004年9月14日にオープン。東京駅から徒歩1分という立地の良さもあり、開館以来、約122万人が訪れたが、今年4月の民主党による事業仕分け第2弾によって「事業の廃止」が決まっていたのだ。

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