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火影

「あるじ、ここは私が」
「こんな時ばかり臣下ヅラするんじゃない」
 城はすでに焼け落ちた。否、この人こそが城である。
 影としてともに育った。覚悟を固めた私に、彼はなおも言い募る。
「生き延びるならお前も一緒だ」
「まだ言うか」
 拳で鳩尾を突くと、あるじは綺麗にくずおれた。その服を剥ぎ取り、己のものと入れ替えて、くたりと重たい身体を他の者にあずける。
「行ってくる」
「……ご無事で」
 かれらが充分に離れたころを見計らい、石積みの上に立ち上がった。
「もはや逃げも隠れもせぬ、我こそはという者はかかってくるがいい」
 踏みしめるは城の礎、積み重ねてきた年月そのもの。敵方の鬨の声に熱い血を沸き立たせ、いまこそ宙に躍り出る。

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