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無職転生大好き芸人です!

おはようございます。
今回は無職転生大好き芸人の皆様にお集まりいただきました。無職転生といえば、現在アニメシーズン第二期が放送中でございますけども、皆さんご覧なられていますか?

私は無職転生のアニメ化が決定されたと告知があった時期には、まだ本作について何も知りませんでしたが、風の噂でどうやらかなり人気な作品であることを知りまして、ええ、当時発売されていた書籍版をすべて購入いたしました。アニメ版については、さすが本作のためだけにアニメ制作会社を新たに立ち上げただけあって気合いが入った作画に、細かな世界観への造詣の深さには目を引くものがありますね。

本作の特徴といいましては、やはり大人気ジャンルのひとつ異世界転生モノですけど、なんと言っても作品のテーマが"家族"であるという点でして、ファンタジー作品でありながらも古風なテーマを掲げています。

物語は家族に追い出された主人公が、トラックと衝突して異世界に転生するところから始まります。まず家族を失うところから始まるんですね。

それゆえになのか、ストーリーは主人公ルーデウスを取り巻くファンタジックな世界観や出来事を下地に敷きながらも、ルーデウスが元来抱えている自信の無さであったり、対人関係への怯えが物語の随所に表れていて、物語の方向性を決めているのはこのルーデウスの性格によるところが大きいんですね。

そして、そんなルーデウスが最も求めているものというのが一度失った"家族"である、というわけなんです。

いやあ、古風ですね(笑)。しかしながら、異世界転生というジャンルをしっかり意識されているからでしょう、転生した理由が家族に追い出されたから、というところからも本作のテーマが家族であるということに説得力を与えていますね。

私が特に好きな場面が、既に放送されたアニメ版の中では二つありまして、一つが父パウロとの和解のシーンで、二つ目が妹であるノルンとの和解のシーンなんです。このいずれもが家族を形成するのに必要な過程、といいますか葛藤が描かれたシーンであるため本作の中でも特に重要な場面です。

魔力災害による転移のために散り散りとなった家族を探して疲弊しているパウロが、やっと再会できたルーデウスに意図せずに強く当たってしまいます。パウロがルーデウスに大きな期待と信頼を寄せていたがために起こってしまった事故みたいなものですが、これによってルーデウスは転生前のように家族を諦めてしまおうとしてしまうんですね。

しかし、パウロがルーデウスにめげずに会いに来たことで二人は和解に至ります。このシークエンスにおいて、ルーデウスが意識的に家族を形成した、という事実が物語に大きな意味を与えています。というのは、本来、ルーデウスは転生前に事実上家族を失っていることから、本当の意味で家族を得るには、ルーデウス側から家族を作ったんだ、という意味のアクションが求められるからです。

異世界転生というのは、赤ちゃんから別の世界に生まれ直すという点で、異世界転移系のジャンルとは一線を画していますが、そのため、生まれたときから既に家族はいるんですね。しかし、これでは本作のテーマである家族を形成した、とは言えないでしょう。ただ生まれただけですから。言ってしまえば、転生しました。家族できました。終わり。ではわざわざテーマに設定した意味も物語である意味もないんですね。

そのため、ルーデウスが家族を新たに得るには、再度家族を失わければならないんです。この場面では実際に失ったというより失いかけた、という方がより正確ですが、失いかけた父パウロとの関係性をルーデウスが意識的に取り戻したこと、ここに物語的魅力が詰まっています。

そして、ここで重要な物語の方法論としては、かつての転生前の家族を思い出している点です。疲弊し切ったパウロを見て、かつての自分を重ねるとともに、ルーデウスは自らを顧みます。転生前の自分と家族や友人の関係や出来事を思い出し、自身を客観的に見るよう努めたうえで、パウロの手をとるわけです。

喧嘩した父と仲直りしました、という無職転生の他の登場人物から見て取れること以上の意味が、これによって生まれていますよね。ルーデウスはかつて諦めた家族や他人との関係性であったり、関係を構築することへの怯えを乗り越えたんです。本作において、家族というものには二重の意味があります。もちろん、転生前の家族と転生後の家族という意味です。ルーデウスが転生後の家族を向き合う時、そこには転生前の家族がある意味で立ち塞がっています。ルーデウスが真の意味で家族関係を構築するには、転生前の家族と向き合い、和解することが手続きとして必要なのです。

実は、私は書籍版を読む前にコミカライズ版でこのパウロとの和解の場面まで読んでしまっておりまして、ただこのシーンを読んだ次の瞬間には書籍版をすべて購入していました。これはそこら辺のなろう系小説ではないなと、しっかり腰を入れて読むべき作品なのだと感じました。それは、家族を形成するというテーマに物語的な説得力を与えるファクターとして、異世界転生モノであるという作品のジャンルを意識したうえで、的確にその構造を利用した方法を取っているからです。転生前と転生後それぞれの家族を重ねることで、作中における事実以上の物語的意味を生んでいるところに本作の魅力を感じました。

また、転生前と転生後の家族を同位置に置く、という方法は、妹であるノルンとの和解においても同様に使用されています。しかし、この場面での魅力は、ルーデウス視点よりもノルン視点側にこそあるといえます。特に、ノルンの語り、自分は兄を許さなければならないんだ、と気持ちの整理をつけるまでの語りには作者の力量の高さを見た気がします。

ノルンにとっては恐怖の塊である兄と、他の登場人物から見た兄の印象に大きな齟齬があり、兄との関係に悩みます。そこから、ノルンが、兄であるルーデウスが既にかつて父パウロとの衝突していた時とは成長していることを、既に家族の構築にあたって必要な転生前の家族との和解を果たしていることを肌感覚で理解し、納得するまでを文章として記述できるラノベ作家が果たしてどの程度いるでしょうか。

アニメ第二期では、シルフィエットと結婚し、物語はかつての転生前の家族と向き合うことを通して転生後の家族と向き合うという段階から、結婚〜出産と自身で一から家族を形成するという段階に移ります。そして、ここからさらに物語のファンタジー展開は加速していきます。

ネタバレが許されるのであれば、この後のストーリー、特にターニングポイントと題される場面は必見ですので、皆様には継続的な視聴を強く勧めたいと思います。


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