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父と暮らす

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父と暮らす ⑯着替えない

父と暮らす ⑯着替えない

連日30度を超える猛暑で、私は汗だくなのだけど、父は全く平気な様子だ。何と今でもももひきなんか穿いている。ガリガリに痩せていてあまり動かないから、このくらいがむしろ快適なのかもしれない。私が扇風機をつけていると、「風、要らんだろ」という。いや、要るだろ。

そしてもっと驚く(あきれる)ことに、父は着替えない。汗をかかないから、着替えなくて良いと思っているフシがある。お風呂上がりに、さっきぬいだ靴下

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父と暮らす ⑮お坊さん

父と暮らす ⑮お坊さん

明日は、お坊さんがやってくる。実家は、昔住んでいた地域のお寺の檀家だ。祖母が熱心に寄進していたお陰(?)で、引っ越し先までお参りに来てくれる。先週ハガキが1枚届いて、13日午前に伺いますとあった。
 
午前とあるだけで、それが9時なのか11時なのかも分からない。父によると、この辺りにはもう数件同じような家があるので、あまり早い時間にはならないだろうとのこと。早速お布施の封筒を用意していた。
 

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父と暮らす ⑭うす味

父と暮らす ⑭うす味

父は昔から、濃い味が嫌いだ。子どものころから食卓では「しょっぱい」以外の感想を聞いたことがない。しょっぱくさえなければ、多少硬くても彩りが悪くても何も言わない。まあ私もどちらかと言えばうす味が好みなので、問題ないと思っていたが。

大学時代の友人とランチに出かけた日、帰ってきていつものように夕食の支度をしようとして気づいた。お味噌汁のお鍋に水が足してある。お昼は父が自分でよそったから、そのときに足

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父と暮らす ⑬クモと男子

父と暮らす ⑬クモと男子

90歳の父との2人暮らしが始まって4ヵ月。クモが出たのは3回目。私はクモが大嫌いで、見かけただけで鳥肌が立つ。黒くて太ったヤツは細かい毛が気持ち悪いし、アシナガなんかは足が1本抜けても平気で走るし、払い落とされたくせに糸を手繰ってまた上ってくる根性も気に入らない。あれ?なんかやたら観察してるみたい。
 
最初に発見したのは、ご飯を作るために台所に立った5月の朝。シンクに黒いヤツが潜んでいた。場所が

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父と暮らす ⑫あちらを立てれば

父と暮らす ⑫あちらを立てれば

大動脈解離の後、血圧を安定させることは最重要課題になった。血圧を下げる薬を飲んで、塩分を排出するカリウムを摂る。でも腎機能低下で、そのカリウムが制限されることになり、大好きな果物も、少し控えなければならなくなった。
 
カリウムはほとんどの食材に含まれていて、全く気にしなくて良いのは、例えば油。でもコレステロールを考えたら、これも積極的に摂るものではない。加えて糖尿病でもあるから、糖分控えめは基本

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父と暮らす ⑪レントゲンの画像から

父と暮らす ⑪レントゲンの画像から

7年前の大動脈解離の話は前に書いたが(↓)
父と暮らす ⑥ICUでお経|草方 (note.com)

救急車を呼んでくれたのはデイサービス先の職員だった。運動中、急に胸のあたりに痛みを感じ、近くの椅子にもたれかかったという。後から職員に聞いた話だけれど、すごく痛そうな様子でもなくて、ちょっと休んでいる感じだったらしい。一応「救急車を呼びましょうか」と訊いてみたら、うなずいたから呼んだとのこと。緊急

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父と暮らす ⑩電気ポット

父と暮らす ⑩電気ポット

実家のテーブルは、いつもごちゃごちゃしている。ペン立て、鍋敷き、お菓子のかごに薬袋。私はシンプルな景色が好きなので、見るたびにざわざわする。でもほとんどは母の趣味だから、入院中だけ少し片づけさせてもらうことにした。退院の日に戻しておけば、問題ないだろう。
 
特に、ど真ん中に鎮座まします大きな電気ポットと、その下のハンドタオル。これを片付けたら、スッキリ広くなるに違いない。お茶が飲みたくなったら、

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父と暮らす ⑨父の作品

父と暮らす ⑨父の作品

実家は昔、商売をしていた。当時の店舗住宅が地方にまだそのまま残っていて、父以外の家族は皆、早く処分したいと思っている。しかし持ち主(父)にその気がないので、話は全く進まない。一応役場のサイトに売買物件として載せてはいるが、ほとんど反応もない。

それが先日、「賃貸ししてくれませんか」と電話があった。通販をしているハンドメイド作家だという。物件の大きさが手ごろだし、適度な田舎具合いが気に入ったらしい

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父と暮らす ⑧オオズワイガニ

父と暮らす ⑧オオズワイガニ

日高沖で大量に獲れているというオオズワイガニ。オオというけどガタイは小さい。地元で一ぱい200円で販売したら大人気、というニュースをテレビで見た。インタビューに答える人が、「知人にも配るから」と大量買いしている。
 
先日、それが近くのスーパーにも並んでいるのを見かけた。でも私はもともとカニに関心がないし、身もあまり入ってなさそうなのでそのまま通り過ぎた。が、その日の夜また番組で取り上げていて父が

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父と暮らす ⑦玄関とトイレと居間と

父と暮らす ⑦玄関とトイレと居間と

母が入院しているリハビリ病院から、家の写真を持ってきてほしいと連絡があった。退院後の生活環境を考えるにあたって、段差や手すりの有無など現状を把握しておきたいという。わーお。モノの多い家だから、ひと様にお見せできるように片づけるのは至難の業だ。
 
ごった返しているモノを片側に寄せて1枚写真を撮り、また反対側に寄せて1枚と、撮り進めるのにかなり時間がかかる。父にもその旨伝えてはいたが、我関せずでPC

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父と暮らす ⑥ICUでお経

父と暮らす ⑥ICUでお経

昨日の記事を書きながら思い出した話。

7年前、父が大動脈解離で救急車のお世話になった。身体を動かすことができず食事も摂れないICUでの数日は、相当なストレスだったろう。面会に行くと、目だけこちらを見て
「警察を呼んでくれ」
という。
「この病院はおかしい。こちらの話を聞かず、強引だ」

ちょうど医師が現れ、違う部屋に促された。

「せん妄が見られます。夜診察するとき、嫌がらせのようにお経の声をあ

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父と暮らす ⑤飲み込みが早い人

父と暮らす ⑤飲み込みが早い人

年を取って嚥下の力が弱くなってきたらしく、父が食事中によくゴホゴホとむせる。食べ方はゆっくりだし、水分を摂りながら、よく嚙んでもいるし、これ以上気をつけられることといったら…。

「ひと口を小さくしてみたら?」
「…」
「なんか、苦しそうだから」
「嚥下が弱くなったんだ」

ちゃんと分かってらっしゃる。カラオケ好きやおしゃべりな人は、のどの筋肉が日ごろから鍛えられているので、嚥下の力もある程度保た

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父と暮らす ④アクリル板を越えて

父と暮らす ④アクリル板を越えて

入院中の母からは、ほぼ毎日電話がある。「2Bの鉛筆を持ってきて」「歯間ブラシが欲しい」「スッキリしたものが飲みたい」。たまに「お父さんは元気?」。

それで、お洗濯物の交換に病院へいくとき、父に何か伝言はないかと訊いてみた。しばし考え込んだ父。

「元気であれば良い」

何だそれ。イノキ? まあ母も、電話を父に代わるかと訊いたら要らないと答えるから、同じようなものなんだろう。そして月に1度の面会日

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父と暮らす ③続・ヤクルト攻防戦

父と暮らす ③続・ヤクルト攻防戦

父と二人の朝食は、6時半と決まっている。お味噌汁やフルーツヨーグルトを用意して、作り置きのおかずを並べる。私はパンが好きだけど父は食べないので、主食は各自用意するシステムだ。ところが今朝、父が「ご飯のスイッチを入れ忘れた」という。とりあえず、私が前に冷凍したご飯を温めることにした。父は玄米食だから、私の白米はイヤだけどパンよりはましという感じ。

お米はお昼に炊くという。昨日ヤクルトがないと気づい

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