見出し画像

アトラクション的「TOKYOパラスポーツパークin駒沢」漫喫記〜こりゃ子どもにウケるにきまってる〜

パラスポーツはスポーツでありながら、ゲームに似ています。
その多くは機器を操って(デザインがまたそそる)、まったく未知の体験ができる。
そりゃ、やってみれば面白いにきまってます。子どもは特に。
そんなことを、初めて知りました、今回。

先週末の8月20日、東京・駒沢で開催された「パラスポーツパークin駒沢」に、家族で行ってきたんですが。
べらぼうに面白かったので、ここに書き残しておこうと思います。

予想以上に盛況。パラスポーツの認知アップを目の当たりに。

東京・駒沢といいましたが、正確には駒沢オリンピック公園というところ。こんな感じで五重塔みたいなヤツがたってるのですが、そのふもとの中央広場が会場でした。

東京駒沢公園の様子。東京パラスポーツ月間ののぼりがはためいている

正直「パラスポーツを体験できればいいな」「子どもが少し視野を広げてくれるキッカケになれば」と思い、あまり期待せずにいったのです。
「ま。二時間もあれば一通り回り切れるでしょ」
と、家をゆっくり出まして。

で。会場につくなり大後悔。
かなりの規模で設営。見渡す限り、ぐるりとテントがひしめき合っていました。
ナメてました・・・。
「しまった。これ、ぜったい回りきれない」
もうそこから血眼&足棒で歩き回る時間が始まりました。

東京駒沢公園の様子 たくさんの人出。曇り空

会場の一角には、車椅子ラグビーや車椅子バスケを体験できるプログラムも。選手が一緒にプレーしてくれるのです。やはり人気だったようで、抽選でした。

あおいシートの上で車椅子バスケのエキシビジョンがされている

印象的だったのは、その人出でした。
当日はちょっと雨がパラついたお天気。夏の暑い最中でスポーツ体験は身の危険を感じるので、もってこいっちゃもってこいの陽気ではあったのですが、人によっては外出を躊躇ってもおかしくない雲行きでした。

なのですが。見てこれ。

パラ射撃のブースの様子。多くの人が体験している

どのブースもこんな感じだったんです。
体験の列にならぶ親子、競技関係者から熱心に話を聞く大人、ブースからブースへ蝶々みたいに渡り歩いていく子。

すげー人いんじゃん!
あれ、パラスポーツって、こんなに人気あるんだっけ。
ここでも侮っていた自分を反省です。
娘の夏の体験に、程度に思っていたら大間違い。
私はかなり前時代的にパラスポーツを捉えていたようです。
今や、学ぶよりも楽しむものになったのか?

その予感が、この後ド的中していきます。

アトラクションとして楽しむパラスポーツ。ゲーセンやテーマパークのように、子どもがハマる。

軒を連ねるブースは、基本的に競技団体が運営していました。
なので、一つ一つが競技の体験&紹介コーナー。

覚えているだけでも、ボッチャ、モルック、ゴールボール、ブラインド射撃、チェアスキー(ウィンタースポーツもあるよ)、車椅子フェンシング、アーチェリー、パラ・パワーリフティング、車椅子レースなどなどなどなど。

持ってみる、着けてみる、乗ってみる、狙ってみる、打ってみる。
機材を使う競技も多いので、ゲーセンやテーマパークに似ています。
そのあたり、子どもは敏感です。
見渡す限り「あれやってみたい」のオンパレード。
なので、どのブースも来場者、体験希望者でごった返していました。
まさにアトラクション。
多くの叡智が結集して、競技になって。そしてスポーツ・エンターテイメントに昇華していました。

スタンプラリーよろしく、あっち行ってこっち覗いて。
皆さんそれはも楽しそうにしているのですが、なんかちょっと雰囲気が違う。
どのブースも、来場者と担当者がおしゃべりに花を咲かせていました。
かなり対話重視。知的好奇心がそこにあり、きちんと応える人がる。
それがとても印象的、というか好印象。
なにかを得て帰れる予感がしました。

そんなこんなで最初に体験したのが、これ。車椅子レースのレーサー試乗。

パラ陸上のレース用車椅子を体験する女児児童

メーターがついていて、思いっきり漕ぐと速度を図ってくれます。
ホイールを手で回すのですが、

「重い!回らない・・・」

娘が泣き言を言います。そうなんです。これが重い。

私も試乗させてもらいましたが、せいぜい13km/h程度しか出ませんでした。
この日のトップは23km/hを叩き出した猛者がいたとか。
どんなヤツだ。こっちは腹筋がつるまで必死こいて漕いだのに。
大分国際車いすマラソンとかみてると、軽々と超高速で走っているように見えますが、ありゃクレイジーだな、と痛感しました。

そして次に体験したのは、ゴールボール。
マスクしてゴーグルすると、こんな感じ。
「まっくらー!なにもみえない!」
と、異空間体験に没入です。

ゴールボールようのアイマスクをつけて興奮する女の子

インストラクターさんがやりかたを教えてくれました。

ブルーシートのうえでゴールボールを体験する人々

われわれ家族は三人で体験。
パスが出てからもらうまで。あるいは、パスを出してから届くまで。
お互いを呼び続けなければなりません。
だって、無音だとそこで方向感覚が途切れてしまうから。

スタートしてすぐに、娘はゴーグルを外しました。
どうしたの?ときくと
「まっくらで怖い」
とのこと。

そう。そういう体験をしてほしくて、ここに連れてきたのだよ。
怖い思いをしている人がたくさんいる。
おそらく、君の身近にも。
それを、どこかの街中で思い出してくれるといいな、と。

ちなみに。ゴールボールは、バレーボールと同じ広さのコートで、バスケのと同じ大きさのボールを放り投げ合います。しかも、ものすごい球威で。さらには視覚ゼロの世界で。
私は私で、想像するだにゾッとしたのでした。

そしてこれ!いっぺんやってみたかったシリーズその1(その3まであります)。
車椅子フェンシング!というか、フェンシング!

フェンシングのサーベルで試技をする女の子と競技団体スタッフ

こちらは、インストラクターさんをつんつくする娘です。
「かたい」
そうです。突き心地。

フェンシングのサーベルのつか。電子局線が接続されている

知ってました?サーベルの持ち手って、こんな複雑な造りになってるんです。でもこれが、楽に握れる構造なんですよね。
ガードにささってるのが電線。これが電気を伝えてポイントをカウントします。

フェンシングのサーベル。よくみると溝が刻まれておりそのなかに電線が走っている

サーベルは長ーい爪楊枝のように、円錐だと思っていたのですが、違うんですね。
細長ーいピラミッドのように、角錐なんです。

フェンシングサーベルの先端。ボタン状になっており、突くと電気が走る仕組みになっている

そしてこれが、サーベルの先っちょ。
スコスコと凹凸するプッシュボタンのようになっていて、ここで相手を突くと電気が走る構造になっています。
こんなディテールを見ることができたのも、もちろん初めて。

なーんか気になってたんですよね。あのサーベルってどうなってるんだろうって。謎が解けた瞬間でした。
たぶん、見たことある人、すごーく少ないのでは。これだけでも行った甲斐があったというものです。

車椅子スキーの体験もありました。
これはさすがに雪は用意できないので、家庭用ゲーム機のWiiを応用したもの。
体を左右に倒すと、画面の中のキャラクターが応答して滑ります。
まさにゲーセンのノリです。

VRでパラスキーを体験する女の子。パラスキーの車椅子にのっている

でも。このマシン感は本物。
生物的なほど進化するまでに、いったいどれほどの研究がなされてきたのか。
間近で見ると迫力がありました。

パラスキーの車椅子のメカニック部分。複雑な機構をしている

そしてこちら。やってみたかったシリーズその2。射撃!
射撃と言っても、目で照準を合わせるのではなく、耳つまり音で合わせます。
標的の真ん中に照準が近づくと高い音、外れると低い音で知らせてくれます。
娘に教えてくださっているのは、長野とトリノのパラリンピックで金メダルを獲得された井口深雪さん。
とても優しかったです。

パラ射撃を体験する女の子

これが射撃用の銃。弾は出ず、赤外線(たしか)を飛ばして、標的のセンサーを反応させる仕組み。

ちなみに。銃の横っ腹に「盲人用〜」というロゴが。
いや、書き方よ。いくら字を読めない人の銃だからって、そんな言いぐさあるかね。英語を直訳したか。
その書き振りを蜂の巣にしてやりたいわ。俺が言うのもなんだけど。

パラ射撃のライフル。木でできている

そして、これがやってみたかったシリーズその3。
VR版車椅子レース。VRゴーグルをつけて、サイバーな世界でレースをする「CYBER WHEEL X」です。
これが目当てで行ったのですよ!
でも・・・。
はい。冒頭の大後悔に戻ります。時間切れで、体験できなかったのです。

とはいえ。死ぬほど残念がる私に、担当者さんが耳寄り情報をくれました。
千葉工業大学東京スカイツリーキャンパスで(千葉なのか東京なのかわからない。TDLからの伝統か?)常設されてるらしい。
しかも体験可。しかもしかも、無料らしい。
これだけやるために、スカイツリー行く価値ありでしょ。
また未来に楽しみが増えました。

VRの車椅子レース。タイヤが光ってサイバーなデザイン

そして最後はサイバーボッチャ。
ボールの位置をデジタル表示してくれるので、わかりやすくてプレーしやすい。

ボッチャを体験する女の子

思いのほか転がるボール。
娘は
「ボールかわいい」
という謎のコメントも。
うん。かわいい。それがかわいいなら、地球もかわいいってことになるね。スケールでかいね、5歳児。

ボッチャのボールを手に乗せる女の子

とまぁ、はなはだ雑ではありますが、こんな感じで巡ってきました。
それはもう、楽しかったの一言では済みません。

親としては、子どもに「他人の靴を履く」体験をしてもらいたかったのです。
縁もゆかりもない人の立場になってみる。それを身をもって、感覚を伴って体験してみる。
その思い出を作りたかったのですが。

この「TOKYOパラスポーツパークin駒沢」は、想像の遥か上をいってました。
他人の靴を履いてみたら、ジャンピングシューズでした!という感じ。
すげー楽しい!と
もし他人の立場になってみることが楽しいのなら、こんなに素敵なことはありません。
まさかそんな経験ができるなんて。

そして、娘が一番楽しかったのは、なんと暗闇が怖いと言っていたゴールボールだったようです。意外。
予想外の体験が、知らない感覚を開いてくれる。
それもまた、パラスポーツの魅力ではないでしょうか。

あー。また開催してくれないかな、と切に願う次第でした。

筋肉orナッシング。そんなパラスポーツがあってもいいじゃない!パラ・パワーリフティング。

一連の競技体験は、もちろん直感的に楽しいものでした。
そして、競技の成り立ち、そこから生まれたルールや機器を知ると、人間理解が深まり、さらに楽しさが増します。
体だけではなくて、頭でも楽しむことができる。
それがパラスポーツの魅力だと感じています。

しかし!
頭より筋肉!
筋肉がすべて!
筋肉orナッシング!
そんなパラ競技があってもいいじゃない!
それも多様性じゃない!
ということで好きになってしまったのが、パラ・パワーリフティングでした。
足をベンチにのせて、下半身の筋力を一切使わずに、上半身のみの(場合によっては、さらに胸から上だけの)筋力を使って、ベンチプレスをする競技です。

もうね。ブース全体が筋肉でギュウギュウ。
白いテントに肉だらけだから、でっかい肉まんみたいな。
そう感じるくらいキン肉超人ばかりそろっていたのが、パラ・パワーリフティングのブースでした。
足以外は筋肉の塊、みたいなインストラクターさん(おそらく超一流選手)が、ベンチプレス体験をさせてくれます。

フツーのベンプレです。
それもそのはず。パラ競技の中でも、障害者と健常者の記録に差がないのが、パラ・パワーリフティングの特徴なんだそうです。

娘が怯え、写真は撮りそびれたのですが・・・。

パラパワーリフティングのうちわ。筋肉で日本をもちあげるとかいてある

みて!このフライヤー。
「筋肉で日本を持ち上げる パラ・パワーリフティング」
障害とか関係なし!

そしてこれが裏面。

パラパワーリフティングのうちわの裏側 

「俺らの暑さで汗かいて、デトックスしていき」・・・。
そこは「筋トレしていき」だろ!

これだから筋肉マニアは・・・嫌いじゃない!


おわりでーす。


この記事が参加している募集

#多様性を考える

27,832件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?