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これが宗教かぁ~11時間拘束されて「幸せ」を押し付けられた話

「クリスマスに会いましょう」


PS3が最新ハードだった時代の話。
俺は中古のPS3ソフトを探して中古ショップを巡っていた。
当時やりたかったソフトがあっても、貧乏故に新品では買えなかった。
2年程前に発売したソフトが千円を切っているのを発見。
面白そうかもと思い、ソフトを手に取りパッケージの裏を覗くと
突然後ろから声をかけられた。


???「すいません」


身長は160ぐらい
細身の身体
全身黒染めのコーデ
くねくね身体を揺らしながら
その男は声をかけてきた


「はい…」
突然の声に驚いた俺は、警戒心を持ちながら対応した。
話しかけてきた男は、ゆっくりと話を始める。


???「この辺に24時間やっているゲームセンターってありますか?」
そう言うと男は身体をくねらせながら自分の状況を説明してきた。
どうやら男は、知人と遊ぶ約束をしていたが、知人が集合する時間が
かなり遅くなるらしく、それまで時間を潰せる場所を探しているとのこと。
ゲームが好きなのでゲームセンターを目指しているらしい。


俺は答えた。
ちょうど近くに大型の中古ショップがあり、そこには
数は少ないながらも、ゲームセンターと同じ様な筐体がある。
しかも、都合が良いことに24時間営業をしている。
そこなら楽しめるだろうと思い、男に場所を伝えた。


男は感謝を述べると同時に、俺の持っているゲームソフトを指差して言う。
「ガンダム好きなんですか?」
俺が手に持っていたのはガンダム達がタッグを組み極限のバトルを繰り広げるゲームだった。
もちろんガンダムは好きだ。男の問いに答える。
「そうですか!僕もガンダム好きなんですよ!」
男は笑みを浮かべながら興奮していた。
ガンダム好きの人間を初めて見つけたのか、男はひとしきりガンダム愛を
語ってくれた。どうやらF91が好きらしい。
丁度いいので、以降この男は【エフ】と呼ぶ。


エフの話を聞きながら俺もガンダムについて語る。
「アレックスがさぁ!バーニィがさぁ!」
楽しかった。
警戒心は完全に無くなっていた。
ガンダム好きに悪い奴は居ねぇ!そう思える程
目の前の男と打ち解けてしまった。
だから、エフが次の様な発言をしても驚かなかった。


エフ「もっと話したいから今度ご飯食べに行こうよ!」


俺は嬉しかった。
初対面でもガンダムの愛さえあれば通じ合えるのが。
そして、この喜びをもっと味わいたいと願ってしまった。
だから俺はエフの提案に即答でOKを出した。
今でも思う。
俺はバカすぎた。


連絡先を交換した俺たちは
何度かメールを交わして食事の約束をした。
美味しい食べ物屋を知っているからそこで食べようとのこと。
場所はエフが指定してきた。初めて会った場所から少し歩いた所。
俺は純粋に楽しみにしていた。


約束の日
集合場所に向かうとエフが居た。
笑顔でこちらに小さく手を振ってくれている。
それに応えるべきところなのだが、違和感がある。
エフの隣に知らない男がいる。


こちらは僕の友達です。
そうエフが言うと男は会釈をした。
エフの友人らしい。
俺とガンダムトークで盛り上がった事を
この友人に伝えた所、友人も一緒に食事をしながら
ガンダムトークしたくなったそうだ。
それは良いけど…普通、人が増えるなら連絡するよね?
急に知らない人増えたら俺も警戒するぞ?


友人は話始めた。
自分もガンダムがもちろん好きだと。
その中でもSEEDが好きでたまらない。
特に曲が最高なんだと。
熱く語ってくれた。
俺の警戒心はすぐに無くなった。
ガンダム好きに悪い奴は居ねぇ!そう思える程
目の前の男と打ち解けてしまった。
SEEDは人気だもんね。
丁度いいので、以降この男は【タネ】と呼ぶ。


タネは車で来ており
エフもそれに乗ってきたそうだ。
これから向かうのはタネがオススメする美味しい食べ物屋だと
エフは教えてくれた。
その店には車で行くらしく、俺も車に乗って移動するとのこと。
警戒心が無くなっていた俺は言われるがまま車に乗り込んだ。
ホント俺はバカだった。


車での移動中
タネは饒舌にガンダムについて話していた。
その内容はアニメの物語では無く、劇中の曲についてがほとんどだったのを覚えている。
何か俺もガンダムの曲について話そうと思っていたが
喋らせる暇を与え無い位にタネの口はマシンガンの様に動きっぱなしだ。
さながらタネマシンガン。
話を聞くことに全力を出していた俺は、ふと時計を見る。
もう40分も移動している。
いったい何処まで行くんだろう…少し不安に思い始めたその時
タネが目的地に着いた事を知らせた。
車から降りて店に向かう。


俺たちはバーガーキングへと入店した



俺(いや!バーガーキングて!!!!!!!!!!!!)



美味い店があると言って来るのがバーガーキング!?
誤解の無いように言っておくが、バーガーキングは美味い。
間違いない。美味い。何度も食べてる。
この場の問題点は、移動時間40分かけてやって来たのがバーガーキングだということなんだ!
おかしいだろ!だって
バーガーキングなら道中にあったから


なぜわざわざ遠いバーガーキングにやってきたのか
なぜ楽しくおしゃべりする目的でバーガーキングを選ぶのか
なぜバーガーキングの名前を隠していたのか
わからない


わからないが頭の中で浮かんでは消えてを繰り返す。
何も言えないままメニューを頼む。
時刻は11時丁度。
店内は少し混んでいた。


タネが店員に聞く
「あの席空いてる?」
店員は席の方を確認すると、軽く会釈した。
あの席?なんで指も指していないのに
どの席の事を言っているのかわかったんだ?
なんて探偵ぶる余裕はこの時の俺には無かった。
全ての事柄が終えた時、この奇妙な質問の意味を理解した。


メニューを受け取ると
先に席に着いていたエフとタネが手招きして場所を教えてくれた。
店の一番奥の席。かなり孤立している席だった。
曇りガラスの様な衝立が立ててあり、スタッフルームへの入口を利用しようとしない限りこの場所へはほとんど人は来ないだろう。


ぺろりとハンバーガーを食べる。
食べている最中もタネのタネマシンガンによるガンダム話を聞いていた。
相変わらず曲に関する話だったので聞き専に徹していた。
そういえば、ここに来る途中もそうだが
エフが一切喋らない。
何かに怯えているかのようにビクビクしていた。


だんだん聞くのも飽きてきた頃
タネが話題を変えてきた。
「今は何の仕事をしてるの?」
俺は当時、週7でバイトするバイト戦士だった。
素直にバイトを沢山している事を伝えると
タネは意外な事を口にした。


タネ「それって幸せなのかな?」



びっくりした。
初対面の人にバイトをしている事を伝えただけで
「お前は幸せじゃない人間だよ」
そんな風に言われた気がしたからだ。


確かにバイトでは辛い事も沢山あるし
給料は安いし、理不尽が毎日起こるストレスに悩んでいた。
心が弱っていたのかな?そうとしか思えない。
俺はタネの問いに対して
「幸せじゃないかも…」
そう答えていた。
そう答えてしまった。


そうだよね!
嬉しそうに話し始めたのはエフ。
エフは何度も頷きながら自身の過去について話し始めた。
自分もバイトばかりをしていた。
人間関係でのストレスでまともに仕事が出来ていなかった。
そんな時、タネと知り合い、タネの紹介で今は車の整備士をしている。
タネのおかげで自分の人生は変わった。
お金も沢山稼げる様になった。
今の自分はすごい幸せなんだ。


エフは嬉しそうに語り尽くした。
話をまとめて書いたから、軽く話をしたと思うでしょ?
上記の話はだいたい1時間ぐらい聞かされたよ。
長いよぉ。ガンダムの話はしないの?
俺はエフの壮絶な人生話よりも
ガンダムの話が出来ないことにストレスを感じていた。


エフが話終わり、満足そうに空のドリンクをすすると
今度はタネが口を開く。


タネ「僕はね、クサバくんに幸せになってほしいんだよ」



タネはそう言って聞かせてくる。
僕たちは皆に幸せになって貰いたいんだ。
人間関係で辛い思いして欲しくないんだ。
お金で悩んで欲しくないんだ。
助けを求めている人の力になりたいんだ。
今のクサバくんはどうだ?
バイトばかりで定職についていないじゃん。
それじゃ不幸だよね?
僕が仕事を紹介してあげるから。
僕には仲間が沢山居るからクサバくんも絶対仲良くなれるよ。
お金を稼げないのは稼ぎ方を知らないからだ。
貧乏のまま人生終わって良いの?
貧乏だと親にも迷惑かけちゃうよ?
一緒に頑張ろうよ。
僕たちは君の味方だよ。


幸せとは何か
永遠とも思える長い間
それについて話してきた。
ほとんど何言ってるかわからなかったが
一つだけわかった


これ、宗教だ



人生で初めての宗教勧誘に巻き込まれた。
途中までは本当に、人生の失敗談を話して成功へと導いてくれる
お節介焼きの人だと思っていた。
そんなわけないのにね。
何回こいつらは口にした?
幸せって単語


幸せ?幸せ?幸せ?幸せ?幸せ?
もう、聞き飽きた。
もう、うんざり。
勝手に人の幸せを決めつける愉快な話は
店の外が暗くなる夜20時まで続いていた。


解放されたい
心の中で呟いた。
解放されるなら何でもいいや。
早く適当に話終わらせて帰ろう。
胡散臭い話を終わらせるべく
俺は質問した。


俺「どうやったら幸せになれるの?」



待ってましたとばかりに2人の口元がニチャついた。
タネは言う。
僕たちは幸せになる為のお祈りをしているんだよ。
僕の部屋には壁一面に山の絵が描いてあるんだ。
それを毎日30分間正座してお祈りするんだ。
たまに仲間も来て一緒にしたりするよ。
エフとも何度もしてるんだ。
このお祈りのおかげでエフは幸せになれたんだよね。
僕の家はここから近いんだけど
一緒にお祈りしない?


聞いた俺がバカだった。
永遠と聞かされた電波な話。
要約すると上記の様な内容だった…気がする。
聞いている時眩暈がしたのを覚えている。


壁の山のイラストに毎日30分祈れば幸せになれる?
ふざけんな!
そんなの絶対やりたくない!
疲労でフラフラしていた脳は怒りで震えた。
目も覚めた。
こいつらは人間じゃない。
人間と思って接するとこちらが傷ついてしまう。


話を終わらせる。
こいつらの話に肯定してはいけない。
その祈りとやらに行かない事を伝えた。
それを聞いたタネは余裕たっぷりに言う。


タネ「でも幸せになりたいって言ったのはクサバくん自身だよ?」



肯定しちゃいけない。
俺はお祈りするぐらいなら幸せにならなくて良いと
タネに伝えた。


タネ「でも幸せになりたいって言ったのはクサバくん自身だよ?」



肯定…しちゃいけない…んだけど
これ…永遠にループしてない?
話聞いてないんだこいつ。
ダメだ。無理だ。
もうこいつらに逆らう事はできない。
逃げられない。
早く楽になりたい…
もう何も考えられない



俺「お祈りします」


タネ「ありがとう」



俺は負けた。
気力も体力も残っていなかった。
もう、流れに任せて楽になろう。
思考の放棄。愚者の行為。
救いは無かった。


タネは言う
これから一緒にタネの家に行き祈りを捧げると。
今回は初回だから、仲間も集めていろいろな話もしたいと。
こんな時間(21時過ぎ)だから今夜は家に泊まって
明日のお祈りをしたら車で送ると。


ちょっと待てよ?
明日のお祈りをしてから送る?
それはダメだ。
俺は明日バイトの朝勤がある。
バイトを休むわけにはいかないので
タネに日を改めてもらうようにお願いしたが


タネ「なら、バイトは休んでください」


タネは淡々と言い放った。
なぜかわからないが、俺はこの言葉を聞いて
めちゃくちゃキレた。


こちとら貧乏人なんじゃ!
バイトを休むのは死を意味する。
今日だって、無理言ってわざわざ休みを取って来たんだ。
なのに?
バイトを休め?一緒にお祈り?
ふざけんな!バイトよりも優先させるお祈りなんてあるわけないだろう!


夢から覚めた気分。
湧き上がる闘志。
俺は絶対に今日帰る!


明日の朝勤は絶対に休めない事を再度伝えた。
しかし、タネの返答は変わらず「バイト休め」だった。
想定内だ。
ならばと、俺は新しい提案として金を要求した。
「2万円ください」
タネは面食らった顔してた。ついでにエフも。
2万円は、とりあえず明日朝勤出なくても何とか賄える金額だと。
バイト先の店長が厳しくて、無断で休むと罰金システムがあると。
俺はタネに伝えた。もちろん嘘だ。
一か八かの賭けだ。これでどうなるか…。


結果として今日の祈り会は無くなった。
さすがに金は貰えないらしい。
良かった…と息をつく暇もなく


タネ「じゃあいつやりますか?」


そら、そう。
問題は解決していない。
ただ先延ばしにしただけだ。
考えろ。考えろ。考えろ。
おそらく「もう会いません」は通じない相手だ。
会わない選択肢は出さない方が良いだろう。
また面倒な問答が始まるだけだ。


会うか。
うん、会おう。
お祈りしたくなってきたわ。
自分の心をそうやって騙す。
これから人生で一番の芝居を始める事にした。


設定はこうだ。
俺は貧乏人だからバイトは休めない(ホント)
先ほどはバイトを休めと急に言われたから気が動転して
金銭を要求するような失礼をしてしまった(ウソ)
本当は俺もお祈り等して、新しい仲間と幸せになりたいと思っているんです(ウソ)
この先バイトばかりなんて嫌なんだ(ホント)
だから別の日にはなってしまいますが
どうかお祈りさせてください!(ウソ)


脳内設定は完了。
後は俺の演技次第だが…やれるのか?
やる気はあるが予定が合わない人だと奴らに認識させる演技。
緊張の一言目


俺「逆に、予定空いてる日っていつなんですか?」


これまでお祈りに対して拒否反応を示していた人物から
発せられた言葉とは思えないな。
同じ事をタネも思ったのか、なにやら考える動作をしていた。
一瞬の間があったが、タネは「こちらはいつでも大丈夫ですよ」と答えた。


いつ、どこで会う約束をするべきか。
俺は足りない頭を使って考えた。
適当な場所を言っても信用してもらえない。
ならば肉を切らせて骨を断つしかない。
俺は自分の住所を教えた。
正確には、本当に住んでいる家の1つ道を挟んだ向かいのマンション名を教えた。
さらに、集合場所として、そのマンションの近くにあるレンタルビデオ店を指定した。
これには2つの目的があった。
1つは、レンタルビデオ店は外に設置してある返却BOXの前に監視カメラがある。その前に集まる事で、万が一自分に何かあった時に証拠を残せる様にするためだ。
2つめはリアリティだ。
自分の家の近くにある場所を集合地に指定する事で、集合当日の集まりやすさを演出した。
さぁ、こちらの要求は通るか?


タネ「いいですよ。何日にします?」


通った!
次は日にち指定か。
これも適当に言うのは信用してもらえないだろう。
納得してもらえるだけの理由が必要だ。
そうなると、自然に答えは出てきた。


俺「クリスマスに会いませんか?」



俺「去年のクリスマスにバイト休みだったんだけど
急に来れない人が出てきて、俺が代わりに出たんですよ。
だから、今年のクリスマスは必ず休める約束したんです。
そしたら1日暇なんで、一緒に行けますよ。
あと、なんか、クリスマスに祈るって良くないですか?
わかんないけど(笑)

この日はクリスマスまで後2週間ぐらいの日だった。
クリスマスというわかりやすい日にち。
バイトは休めるからドタキャンは無いし
クリスマスという事で興奮している人間の演出。
…いけるか?


タネ「その日は難しいかもしれません」


ん~~~~ダメか。
困った。とても。
クリスマスがダメならどうする
別の日を考える?いや、それだと俺がバックレる可能性を相手に印象させてしまう。
年明けまで待ってもらう?いや、約束の日が長い程、俺がバックレる可能性を相手に印象させてしまう。
俺は今後、あなた方の仲間になる人間ですよーを意識させなきゃ意味が無い。
ここは引き下がれない


俺「どうしてもダメですか?そうなると年末年始は一番忙しい時期になるので、年明け…早くても2週目とかになるんですよね。しかも1日休みとかじゃなくなるかもしれない。正月明けって皆休みがちになるんですよね。ホント困る。


おそらくハイになってた。
非日常の場での命がけの演技。
眩暈を起こす程疲れていた脳がフル回転している気分だった。
口もよく回る。
頼む…頼むから!


タネはエフとなにやら小さい声で話し合っていた。
エフが頷くと、タネはこちらに目を向けて


タネ「わかりました。クリスマスの日で大丈夫です。」


俺(勝った!!!!!!!!!!)



笑うな。まだ、笑うな。
最後の詰めを見誤るな。
悟られるな。隙をみせるな。
冷静に話を続けた。


俺「ありがとうございます。」
タネ「ただ、その日は1日中はできないかもしれません。夜に予定が入っているので、午前中からになりそうだけど、いいかな?」
俺「全然いいですよ!すいません、無理言って。」
タネ「時間は9時に集合でいい?」
俺「はい!大丈夫です。」
タネ「じゃあクリスマスの日に集合という事でお願いします。」
俺「お願いします!」


誰が行くかバーーカ!!!!!!!!!!



心の中でガッツポーズ。
これでようやく解放される。
約束の日はもちろんバイトがある。
クリスマスなんて稼ぎ時じゃ!
よくわからん壁に祈るぐらいなら
空想上の赤服じいさんにプレゼントを祈る方が奇跡は起きるだろう。


こうして俺は店を出た。
約11時間もの間お世話になったバーガーキング。
途中でおかしいと思った事がある。
店員が長時間居座るお客様に対して声をかけていた。
おそらくその客は俺よりも後に来た客だと思う。
その客には声をかけるのに、なぜ俺たちには声をかけなかったのだろう。
それどころか、軽く掃除をする店員含めて、誰一人俺たちの席には近づいて来なかった。
何が言いたいか?
もしかしたら、店も含めてグルなんじゃないかと疑っている。
タネの店員との会話は、日常的に宗教勧誘に使っている
ココの席を確かめる為の「あの席空いてる?」発言だったのかな。


もういいか。どうでも。
俺は解放された。自由だ。
早く帰りたい。
そう思っている所にタネが一言


タネ「送っていこうか?」



丁重にお断りしました。
送り先が駅とは考えられないからな。
そのまま自宅に連れ込まれる可能性が高いだろう。
すなわち死を意味する。
何気に今日一番の危ない場面だったかも。


再度2人と集合の日を確認しあって別れた。
俺はタクシーで家に帰る。
家に着いて玄関を開けた時
静かに泣いた。


長い拘束から解放された嬉しさなのか
自分のバカさに嫌気がしたからなのか
ガンダム話を出来なかった悔しさなのか
一世一代の演技の反動が来たからなのか
静かに泣き続けた


そして約束の日がやって来る。
俺はもちろん行かない。
バイト先に向かい、サンタのコスプレをしてチキンを売りさばいていた。
心のどこかに「あいつらが店に来たらどうしよう?」と不安を感じていたが
奴らは来なかった。


終わった。
振り返れば、俺がバカだからいけなかった。
知らない奴にホイホイ付いていくなんてどう考えてもダメだろう。
胡散臭い奴ってのは優しそうに見えるもんなんだよ。
今回は無事に脱出できたから良かったけどさ
下手したら死んでたかもしれないんだよ?
知らない人の家に踏み込んで
カルト的な電波を受信させられて
無事に生きていられると思うかい?
これに懲りたなら、人を疑う事を覚えなさい。


以上
俺の人生初宗教との出会い物語でした。
5%ぐらいは噓を混ぜて話したけど
ほとんど本当の話だから怖いとこね、これ。





おまけ
約束の日から起きた不思議な出来事。
深夜2時ぐらいに毎日電話がかかってきた。
初めてかかってきた時にうっかり出てしまった。
電話の向こうからは、変なうめき声?の様な
小さな声が聞こえた。
気持ち悪いので以降は着信拒否をして対応していた。
年明け位までは番号を変えて電話は続いた。
今は静かになっている。


そして
この気持ち悪い電話がやんでから2週間
俺は再び


宗教勧誘に騙された


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