見出し画像

【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 皐月

目覚まし時計

 アーちゃんは、自分から何かが欲しいと言ったことが、余りありませんでした。
 パパは、ターちゃんが玩具おもちゃをねだる時、一緒にアーちゃんにも尋ねます。
「アーちゃん、何がいいの?」
「うーん」
「ターちゃんとは違うのでも、いいんだよ」
 アーちゃん、悩んだ後、
「同じでいい」

 ある日。
 そんなアーちゃんが、みんながびっくりするほど大きな声で泣いて、欲しがった物があります。
 それは……。
 おじいちゃんが、ゴルフのコンペでもらってきた置時計でした。

 よくよく聞くと。
 ターちゃんが小学校に上がる時、お祝いにとママの友人がくれた、ドラえもんの目覚まし時計が欲しかったんだそうです。
『ぼく、ドラえもん』
 設定した時間になると、アニメの声優の声が流れます。
「アーちゃんも、小学生になったら買ってあげるからね」
 一旦は合点したのですが、おじいちゃんの時計を見て、それがせきを切って流れ出たのでした。

 次の日、早速ママといっしょにデパートへ行って、目覚まし時計を買ってもらいました。
 アーちゃんは、ドラエモンではなく、猫の形をしたのを選びました。

『ヨヨイノ、ヨイ。ヨヨイノ、ヨイ』
 今朝もアーちゃんの枕元で、軽快な声が流れます。

 目覚まし時計は、止められることもなく、鳴り続けています。


アーちゃんの変化

 アーちゃんに変化が訪れました。
 この頃、アーちゃんにガールフレンドができたのです。

 チーちゃんは、アーちゃんと同じ『くまぐみ』の女の子です。
 アーちゃんのことが大好きだそうです。
 アーちゃんもチーちゃんのことが大好きなようです。

 家が近所なので、幼稚園から帰ってきたら、遊びに行ったり来たり。

「チーちゃんの方から、遊びに行きたい、って言ったらしいの」
 帰宅したパパに、ママがそっと教えてくれました。
 それでも、アーちゃんにすれば大きな進歩です、

 他にもアーちゃんに変化が見られます。
 相変わらずターちゃんに泣かされているのですが、それでもこの頃はしっかりと手数を出しているようです。ターちゃんに鍛えられて、ずいぶん逞しくなったものです。
 言葉使いも心なしか力強くなってきた気がします。

 そして。
 少なくとも、ガールフレンドに関しては、アーちゃんが一歩リードしました。



よろしければサポートお願いします。また読んで頂けるよう、引き続き頑張ります。