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短編

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今まで投稿した短編を纏めました。
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記事一覧

【短編】鉛筆

 私が小学五年のことだ。  コトン。授業中に舟を漕いでいたらしい。隣席の櫻井大介が僕の左…

来戸 廉
4週間前
12

【短編】終の棲家(ついのすみか)

「どうしたんだい、ぼんやりして」  憮然とした顔で縁側にしゃがみ庭を眺めている妻の背中に…

来戸 廉
1か月前
10

【短編】二人 (後編)

■ 「ところで、今までどこに行っていたの」 「アメリカだ。上司が心配してくれてね。いい機…

来戸 廉
1か月前
9

【短編】二人 (前編)

 小料理屋に着いたのは午後九時を少し回った頃だった。  紺地に『田上』と白く染め抜かれた…

来戸 廉
1か月前
6

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (後編)

(5,282文字)  石田と亜希子は、七時に社務所を訪ねた。宮司は改めて禁止事項を告げた。  …

来戸 廉
3か月前
9

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (前編)

(3,792文字) 1.観光地PR活動  朝からどんより曇った空を見上げて、気象庁が梅雨入り…

来戸 廉
3か月前
11

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (後編)

(2,502文字) 「今度は、何?」  お手洗いから戻ってきた田所は、何か感じ取ったみたいだ。 「犬を捜してくれって……」 「あなた、今度はちゃんと断ったわよね」 「はい。でも先方から一方的に電話切られて……。明日、写真持って、来るそうです。先輩どうしましょう」 「あなたねーっ。どうして、いつもそうなの。私は今年で五年になるけど、そこまで厄介な目に遭ったことは1回もないわよ。まあ確かに月に数件おかしな電話が掛かってくることはあるけど……。あなた、何か憑いているんじゃない?

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (前編)

(4,001文字) 1.田所さん@ゴシップ好き  月曜日。  朝からどんより曇っている。  田…

来戸 廉
3か月前
10

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係(後編)

3 リダイアル  リダイアルボタンを押すと携帯電話の番号が表示された。数回の呼び出し音の…

来戸 廉
4か月前
9

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係(前編)

(4,068文字) 1 名無しの権兵衛さん 「はいっ?」  五ノ鹿町観光協会に勤務する菅野亜希子…

来戸 廉
4か月前
10

【短編】白い記憶(2/2)

(3,023文字)  眩しくて目を覚したら、燦々と降り注ぐ陽のもと、バス停のベンチで寝ていた…

来戸 廉
4か月前
4

【短編】白い記憶(1/2)

(2,753文字)  妻が庭の芝に散水している。その傍らを三歳になる娘が走り回る。白いワンピ…

来戸 廉
4か月前
5

【短編】なごり雪(2/2)

(3,714文字) 5  金沢街道を歩いて、鶴岡八幡宮に向かう。  明子は岡村の腕を取って歩く…

来戸 廉
4か月前
8

【短編】なごり雪(1/2)

(4,156文字) 1  岡村にとって、この年の忘年会はあまり気乗りがしないものだった。ここ何年か欠席し続けていたため、今年ぐらいは出てみるかと参加したのだが、始まって十分もしないのに既に後悔し始めている。四十歳を過ぎて少しは良くなったものの、仕事を離れた人付き合いが苦手なうえに、下戸ということも相まって気を重くしていた。  忘年会は、部長の挨拶から始まって、後は無礼講というお決まりのコース。頼んであったのか、コンパニオンが並んで挨拶をする。一向に興に乗れない。何が面白