途上シンガー
音を立てて鳴る心臓を抱いて
確かにここに立っている
燃え上がるような夢を掲げて
確かにここで生きている
心を通わせてもいないけれど
出会った人はマネキンじゃないよ
“確かにその血が通っていたでしょう?”
帰宅ラッシュの早歩き
前だけ向いて興味ゼロ
何かを目指す人々は
脇目も振らず過ぎていく
全速力でもなかったけれど
道を間違えた訳じゃないよ
“確かにその足で歩いて来たんでしょう?”
どこか遠くにすり抜けて
目が合ったのに気づきもしない
喉が枯れるまで叫んでも
誰も相手にしちゃくれない
純度100%でもないけれど
見えているモノは幻じゃないよ
“確かにその目に映っているでしょう?”
今日も夜中の駅前広場
ちゃちなライトに照らされて
安物の白いギターを抱いて
潰れた声でただ歌う
心からの本音でもないけれど
叫んだ言葉は嘘じゃないよ
“確かにその耳に響いているでしょう?”
独りよがりな愛の唄
誰かを殺して守った平和
大それた台詞に限って
軽々しくて無責任
所詮は単なる言葉遊びで
カッコつけたいお年頃
それが意味する重みや鎖
背負える程の背中じゃない
生きているかなんてわからないけれど
ホントかウソかはどうでもいいよ
夢に燃え尽きたココロを抱いて
零れたコトバは届くだろうか
“確かに ここで 歌っているでしょう?”
“ただ この声を 聞いてもらいたいだけでしょう?”
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