to You

雨音の響くバス停で
窮屈に握る折り畳み
はみ出た肩が濡れながら
袖が湿って重くなる
小さなブーケをぶら下げて
わたしはひとりで立っていた

“Happy Birthday to You”
頭の中で歌ったけれど
この声はそこへ届くでしょうか
思い返すのは笑顔のあなた
あなたと一緒に微笑むわたし

会えないあなたは笑えてますか
選んだ暮らしは楽しいですか

まあるくほころぶ赤い薔薇
名前も知らない青い花
外では変わらず雨の音
茎が斜めに揺れている
水道の水を溜めた瓶
一粒の泡が浮かんで消えた

“Happy Birthday to You”
黙ったままで呟くけれど
この声はそこへ届くでしょうか
想像するのは喜ぶあなた
あなたのように喜ぶわたし

思い出の日々は晴れ渡り
綺麗な花を咲かせます
あの日のあなたは色づいて
しあわせそうに笑うのです

あなたが時間を止めてから
まだまだ雨は止みません
あなたは時間を止めたのに
二度目の夏が始まります