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高く透明な黒の果て

すきま風にぼくは起きた
寒波到来で凍える夜

布団のなかは冷えきって
はみ出た耳も指先も
感覚なんて消えている

ぼくは無理矢理そこを出た
毛布をとりに部屋を出た

寝室を別にしようって
言い出したのはいつだっけ

少しあいたドアの隙間
真っ暗なそこに目をこらす
やがて視界も慣れてきて

小さなベッドが空だとわかる
端にいるのが背中とわかる

カーテンをあけて腰かけるきみ
こんな寒さで何を見ているの

明日の予報は雨のち曇り
月も出てないし暗いだけだし
いつまで経ってもわからない

得体の知れないきみのこと
消えてしまいそうなきみのこと

うしろ姿にぼくは見た
高く透明な黒の果て

ドアを離れ部屋に戻る
忘れてしまった毛布はないけれど
寒さに震える夜でもいいか

独り言はかき消された
すきま風にかき消された

いつか訪れる時の果て
見上げるきみは見たくない
見上げるのならぼくでいい

縮こまってぼくは眠る
壁の向こうできみも眠る

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