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幡野広志さんのことばと写真

幡野広志さんの写真展に行った。
ずっと本を読んでいたから、とてもドキドキして、どんな言葉に出会うのか、写真に出会うのか、緊張した。

言葉が胸にすーっと染み渡っていく。
納得をする。核心をつかれたようでドキッとする。

そんな時間だった。
どの言葉も、どの写真も、よかった。
決して飾られていない、ただそのまままるで壁から、浮き出てきたような、こころにずっと入っていく、そんな数々だったからだと思う。

サムネイルにした写真が一番好きだった。
海に向かってみんなで体操している写真だろうか。

いつだって人間はそう、広い方へ海に向かって、空に向かって生きているんだと思う。

わたしたちは普通なんて存在しない世界で、いつだって本当はないはずの幸せの基準の中で、唯一無二の自分たちを比べられないなにかと無理やり比べて生きている。そうして、勝手に一喜一憂する。

ああわたしは、そんな自分を、人間を、社会を超える存在になりたい。そんなことを強く思った。

人生とは自分で選んで人生になる、自分で選ぶことができる。たしかに小さな頃、あの頃のわたしにはできなかったかもしれない。ハンバーグが食べたくても、夜は麻婆豆腐の日もあったし、小学校は住んでいる場所で勝手に決まった。

でもいつからか、行きたい大学や、住む場所や、ともだちや、恋人、たべるもの、着るものも選べるようになった。

それなのに、人生を選ぶことはまだ全然できていない。未来がいつも怖い。

もっと、日常なんだよ、もっと、特別なことじゃないこと。夜が来て朝が来るように、息をするように、毎日を生き抜くこと。

わたしに今足りない勇気をすこし、幡野さんにもらった。幡野さんの言葉に、写真にもらった。

幡野さんに話しかけたかったけど、なにを話せばいいのか、適当なことを言ったら見抜かれる気がして、話しかけられなかった。応援してます、とか、がんばります、とか、そういう言葉ではなにも伝えられない気がして、ただ幡野さんが他の誰かと喋ることばを盗み聞きしていた。

本を読むようになったのは、幡野さんが癌だったからで、確か私もパパが癌になったくらいの時に読み始めた。でも、言葉たちは写真たちは、幡野さんが病気だから綴られた訳ではないことがよく、よくわかった。

幡野さんの心がとてつもなく、とてつもなく、健康だから。

心の健康さは、いい言葉を、いい環境を、いい人生を作るんだと思う。

幡野さん、ありがとうございました。また次の展示会やイベントの時には、話しかけさせてください。

読んでいただいてありがとうございます。もしも、共感してくださったり、興味を持ってくださったりして、サポートしたいと思ってくださったらとっても嬉しいです!