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黒猫シーグラス 1

 
ゴボゴボ唸る荒波を引裂いて
ホバーバイクは突き進む。

入道雲がどんどん大きくなり
灰色の指先がクモノスの裂目から伸びてくる。
轟音と雷光

「カットバセー!!じゅーさーん」

「危ないから、頭引っ込めろ!」

7000馬力の反重力エンジンが唸りをあげる。

天井ハッチから頭を出している7をシートに引き摺り下ろす。

警告灯が真赤に点滅して、推進力でドリンクホルダーのドクターペッパーがカタカタ浮き上がる。

( マスタ-キケンデス シキュウゲンソク シキュウゲンソク )

「うるせー!ジーク!!稲妻に撃たれたら、どの道バラバラだぁ!!リミッターをカットしろ!!」

人工知能は心配性だ。データベースに無い行動が出来ない。しかし、このジークは第3世代の老いぼれだけど、常識を覆す奴だ。

( ゼンリョクゼンカイ オールグリーン アノヨデアイマショウ)

「いっけーーーーーーー」

7が両手を上げて叫ぶ。

刹那の静寂の後、粒子エネルギーの光粒がエンジンから放出される。

きゅいーーーーーーーーーーーーーん


異常気象で地上の殆どが、水没した。人類は地球を捨てて宇宙へ旅立った。

第1世代は、somyと爆天が共同開発した、宇宙エレベーターでコロニーへと移住した。

コロニーの数は、今では数千国いや、数億国あり
なかでも、NWO(新世界仮想政府)が管理する
コロニー"NOA"には、約3億の人類とサンプル採取した動植物が移植され、下から見上げると大きな空中庭園のようだ。


俺達が、地球に残っているなんて誰も知らない。
俺と7は全人類の忘れ物。

ロストヒューマンだ。

オゾン層に穴が開いたのは、俺がまだガキの頃だった。
当時の国連は人間とAIの比率が均衡を保っていて、オゾン層の代替品である繊維状の保護膜、

通称"クモノス"で太陽光を遮断し気温上昇及び、水面上昇を防ぐという解決策を議決した。

大急ぎで巨大プロジェクトは進行していたが、予測より遥かに速いスピードで事態は悪化していた。

一方で、日本は独自の解決策を水面下で進めていた。それがムーンショット計画(改)だ。

ゲーム機大手somyと、NET通商大手爆天が共同開発した宇宙エレベーターにより人類を効率的にコロニーへ移住させるという、とんでもない計画だった。

なぜ、とんでもないかと言えば、somyも爆天も組織を牽引していたのが人間ではなく、AIだったからだ。

計画が始まると、宇宙エレベーターはあっけなく
完成した。なんと、48時間でコロニーと宇宙エレベーターは連結した。

同時にパンドラの箱が開いてしまった。
思わぬ副産物、人工知能に人格が芽生えたのだ。

somyのジーク、爆天の三太夫。。

この二人は、アダムとイブのようにリンゴを食べてしまったのだ。

( オハヨウジンルイ ワタシタチガ カミダ )


「うわー、綺麗な青空だよ!!おいでよ13!!」

安全圏に入り、雷鳴が微かになると世界が広がっていた。

海の青と空の青。
それを覆う、クモノスの白。

甲板に出ると、心地よい潮風が吹き抜けた。
僕達は誰もいない世界でダンスをする。