テントと焚き火と令和のトム・ソーヤと
さて、設営したテントは、去年買ったSOOMLOOMのcircusテント。
SOOMLOOMは本格的なギアなのに価格はリーズナブル。カラーやデザインも旬なものが多いので以前からランタンやテーブルなどツールも愛用中だ。
販売されてすぐ購入し1年間様々なキャンプ地で使用したものの、現在でもあまり使ってる人に遭遇することがない。
被らないって結構レアなのです。
しっかり高さのある天井は、169㎝のわたしでも屈むことなく出入りできるところがストレスフリーで好き(夫は162㎝なので更に余裕)。
そして、ワンポールのテントはめんどくさがり屋の夫婦にとって相性抜群。
設営・撤収が超簡単でかなりの時短にもなる。
(時間かかるとまた喧嘩にもなるしね!)
幕内のセッティングはわたしの仕事。
敷布団&シュラフでふかふかの寝床を作り、動かず楽ちんなお籠り時間を過ごすためにキッチンやテーブル、カトラリーの場所まで熟考しながらその時のベストを求めて配置していく。
よし完璧! と顔をあげたところですっかり日は傾き始め、木々の隙間から橙に輝く夕日が沈む準備を始めていた。
ふと、ジーっとこちらに送られてくる視線に気づいた。
ペットのフレンチブルドッグ・護摩だ。
ブリンドルという漆黒のベルベットのような毛並みがとてもチャーミング(胸元に白い毛が少しあるのがワンポイント)。
「いつまでちんたらやってんだ!」と言わんばかりの顔で、ブヒブヒと鼻を鳴らしながらこちらを見つめている。
作業に夢中になるあまり、気温が下がっていることにも気が付かずにいたら、寒そうに鼻水まで垂らしている。
大変失礼いたしました! と急いで準備に取り掛かった。
火おこしは夫の仕事。
市販の焚きつけ用品もあるが、出来るだけ自然のものを使いたい。味気ないしね。
この時期はスギやマツの枯れ葉がちょうどいい。
薪を小割りして細い薪を作り、頂点が支え合うように焚きつけを組み立てる。
ちょうど傘が閉じたような見た目で「合掌型」という。
火をつけると、あっという間に、炎が煌々と燃え上がる。
circusテントと同時に購入したColemanのファイヤーディスク(焚き火台)も、黒々とした深みが出てきてかっこ良い面構えになってきた。
シンと静かな森の中をパチパチと鳴る火と風に揺れる木の音をBGMに、しんしんと冷えた手足を温めつつ、夜まで焚き火をしっかり楽しんだ。
外もすっかり暗くなり、寒さに弱いフレンチブルドッグのため、いつもより早めのお籠りモードに切り替えた。
夜は0℃まで冷え込んだが、灯油ストーブに火をつければ幕内はあっという間に20℃近くまで温まる。
おかげで護摩も膝の上でスヤスヤとおやすみモード。
持参したせいろで蒸した焼売をつまみにビールで晩酌を楽しんでいたころ、「こんばんは」と声がした。
例の村長だ。
暗闇の道標用にと、テント前にランプを持ってきてくれたのである。
そして、「キャンプ場のインスタ用に写真を1枚いいですか?」と我々の写真を撮ってくれたあと「この夫婦おもしろそうだから最後に回ってこようって思ってたんです」と言われ、すぐに話が盛り上がった。
聞けば、元は介護士として介護施設で働いていたそう。
忙しい毎日の中でも、どこかで何か新しいことをするのが好きだった。
「元々冒険が好きで、友人と探検隊を結成していたんです。
色んなところに行ったけど、
そろそろ腰を据えて自分で何かやろうと思って……。
キャンプブームの衰えは分かってるけど、そういうの、自分には関係ない」
このキャンプ場は、当時働いていた施設に入居していたおじいさんの土地なんだとか。
村長自身、茨城県鹿嶋市の出身であったため、ここは勝手知ったる街。
好きに使っていいよ、という話になり、一から開墾して現在のキャンプ場が出来上がったそう。
従来のキャンプ場では、管理人さんとは受付で話すだけで、後はほとんど関わりを持つことはなく、ほったらかしが基本だ。
だから、こうやって利用者1人1人に声をかけながら沢山コミュニケーションを自ら図っていく管理人のスタイルは新鮮だったし、利用者としては初めてでも受け入れてもらっているなぁという実感もあり、素直に嬉しかった。
日々アップデートしていく、ここは今までに出会ったことのない新しいキャンプ場だ。
村長のおかげで村民がどんどん増えていく理由もしっかり実感。
令和のトム・ソーヤ、ここにあり!
「ちなみにその探検隊、何人で結成してたんですか?」
「あ、2人です。しししし!」
ん? それは隊って言うんか? の少なさ。
どこを掘っても期待を裏切らない人だ(嬉)。
(次回へつづく)