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アップテンポなEDMで剣舞! 刀エクササイズに挑戦した

真っ向斬り、袈裟けさ斬り、逆袈裟ぎゃくけさ斬り、水平斬り──アップテンポなEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)に合わせて正しく動作を行うのは難しいが、思いっきり刀を振るのは気持ちいい!

世界初の刀箱師かたなケースし中村圭佑さんへの取材で刀の美しさに触れたら、今度はちょっと振ってみたくなってきたぞ! とはいえ、いきなり本物の刀を扱うのはハードルが高い。調べていくうちに見つけたのが「刀エクササイズ」だ。振るのは手首を痛めない軽さでなおかつ本物に近いフォルムに開発された刀エクササイズ専用の刀。安全で手軽だが、剣術の基礎を学ぶことができ、よい運動にもなりそう。早速取材を申し込んだ。そこでライターが体験したのは……。


刀エクササイズとは?

刀エクササイズは、剣舞右近流家元でコレオグラファー(振付師)の孝藤右近(たかふじうこん)氏が、ヨガや日本舞踊、剣舞の経験を生かして考案したエクササイズ。テンポのよい音楽に乗りながら、真っ向斬りや袈裟斬りなど剣術の基本の型を実演することで、有酸素運動を行う60分のプログラムだ。

今回指導してくれたのは、刀エクササイズインストラクターの齋藤示郎さんと寺西小百合さん。齋藤さんは刀エクササイズの効能についてこう説明する。

刀エクササイズインストラクターの齋藤示郎さん。剣舞右近流の一員として剣舞の舞台にも上がる

「一つ一つの型をきれいに見せるためには、肩甲骨の位置を動かしたり、胸の筋肉を動かしたりする必要がありますので全身運動になります。体重減少やヒップ、ウエストのサイズダウンにつながったという人も。また、刀にはある程度の重さがあるので、それを持って振ることで腕のシェイプアップにもつながります。さらに素足で行うことで足の裏に刺激を与えることができ、脳の活性化の効果も期待できます」


刀エクササイズインストラクターの寺西小百合さん、元は生徒だったがインストラクターへ転身

寺西さんは、受講生について「刀や日本文化が好きということがきっかけで始めた方が多いです。ダンスのように楽しくできるエクササイズで、和の文化も体験できるのが魅力。長年続けている方も多いです」と語る。

 

聞けば聞くほど楽しそう。だけど運動不足のライター、ついていけるか少し心配……。ええい、案ずるより産むが易しというじゃないか。まずは挑戦してみよう!


果たしてついていけるのか

運動不足のライターが挑戦!

60分間のプログラムの内訳は、10分間がウォーミングアップ、続いての20分間が腹筋や背筋への効果が期待できるプログラム、最後の30分間は技を組み合わせて動くプログラムになっている。

普段はすぐ音楽に合わせて刀を振るそうだが、今回は初めてということで基本の構えや刀の振り方を丁寧にレクチャーしてもらった。

まずは礼法という刀へ敬意を表す作法や、「正眼の構え」「上段の構え」などの刀を振るまでの基本の動き(構え)からスタート。ただ構えるだけでは、様にならない。寺西さんからのアドバイスをもとに、肘の関節を伸ばし、胸を張る。構えだけでこんなに難しいのか! でも、構えがきれいに見えると武道の世界に入り込んだようで楽しい!


正眼の構えを教わる。柄(つか)を握る位置でも美しさが変わるのだ


続いては振り方だ。敵の頭から真下に向かって振り下ろす「真っ向斬り」、敵の肩から胴にかけて斜めに斬る「袈裟斬り」、袈裟斬りの逆で胴から肩へ向かって斬る「逆袈裟斬り」、敵の胴体を真横に斬る「水平斬り」などを次々に教わっていく。

大事なのは、常に腰を落とし、肩甲骨を寄せて胸を張った姿勢を維持して刀を振り下ろすこと。これが言うほど簡単ではない。何度も振り下ろすと……。ちょっと待って、汗がじわじわ出てくるぞ! 普段使うことのない肩周りの筋肉や、股関節、太ももの筋肉が悲鳴をあげる。


袈裟斬りの動きを確認。肩甲骨の位置を意識するだけで見え方が変わる

「もう少し肩甲骨を寄せて、胸を張って! 足を広げると安定感が増しますよ!」と寺西さんの指導も熱を帯びる。その通りにやると、鏡に映る姿勢も確かに格好がつく。刀を持ってポーズをとる自分、なんかイケてるぞ……!

 

基本的な動作を教わっただけで、全身にじんわりと汗をかいた。続いてはウォーミングアッププログラムに挑戦!(まだウォーミングアップか!)

 

全身にじんわり汗が! 上着なんて着ていられない!


思いっきり刀を振るのは気持ちがいい!

軽快なEDMのリズムに乗って、習ったばかりの型を繰り出していく。真っ向斬り、袈裟斬り、逆袈裟斬り、水平斬り──速いテンポに合わせて正しく動作を行うのは難しいが、思いっきり刀を振るのは気持ちいい!

習った動きを音楽に合わせておこなっていく


そして最後にジャンプしながら刀を勢いよく振り下ろす兜(かぶと)斬り。すでに息が上がっているのに、さらにジャンプを繰り返し、体力が削られていく……!

型を教わっていた時とは比べものにならないほどの汗が噴き出てくる。これでまだウォーミングアップなのだから、びっくりだ。刀を振るだけでこんなに疲れるのか……。

兜斬りは体力的にきつい!


そしていよいよメインイベントともいえる腹筋プログラムへ。敵と刀を交えることを想定した動きで腹筋を集中的に鍛えていくという。なぜ刀を斬り交わすことで腹筋を? と思ったが、やってみたらよーく分かった。前から来た敵を避けるように腰をひねる! 前方の敵の刃を受けながら、すかさず反転して後ろの敵を斬る! 腰をひねる所作が多いのだ。これは確かにお腹に効きそう!

「背筋を立てて!」と寺西さん。今日最も難しいが、でも一番楽しい。

腰をひねって後ろの敵を斬る! 難しいが、実際に戦っているようで楽しい


夢中になって動いたが、残念ながら体力の限界。予定プログラムを残してギブアップ! 最後の礼法も立っているだけでやっと。はあ、体力を付けて出直してきます……。

でも、音楽に合わせて刀を思いっきり振って汗をかいた後は、ものすごく気分がスッキリした!


最後に礼法をおこなって終了。ありがとうございました!


機能美で心を魅了されたかと思えば、エクササイズで剣術の楽しさを体験──日本の刀文化はなんて奥深いんだ……。もっともっと刀について知りたくなってきた。今度は博物館にでも足を運んでみよう。

Supported by くるくるカンカン


クレジット

文:古澤椋子
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社
撮影:高野宏治
校正:月鈴子
取材協力:刀エクササイズ
制作協力:富士珈機

ライター・古澤椋子 https://twitter.com/k_ar0202
1993年生まれ、東京都板橋区出身。水産系の社団法人、ベンチャー企業を経て、2023年よりフリーライターとして活動開始。映画やドラマのコラム、農業系イベントの取材、女性キャリアに関するSEO、飲食店取材など幅広く執筆。在宅ワーク中心で、運動不足なことが課題。


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