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短歌ヨミタイ

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ここ数年、「短歌」を詠む人も、読む人も増えているのを、うっすらと感じていた。あれ? 短歌って五七五七七がルールじゃないの? 俳句と違って季語もいらないの? こんなに自由なの? だ…
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#詩

書評|『詩と散策』(ハン・ジョンウォン著/橋本智保訳)(書肆侃侃房)

〈散策が詩になるとき〉 冬の真っ白い雪と幻想的な光、果物を乗せたトラックと猫、寡黙な川――散策とは、このような散らばりのなかにある存在を拾い集めることかもしれない。それが詩人によるものであれば、散策もまた詩になる。『詩と散策』は、散歩を愛した詩人ハン・ジョンウォンの散文をまとめたエッセイ集だ。 「私が冬を愛した理由は百個ほどあるのだが」とはじまるこのエッセイ集は、散策を通じて、その日常に散らばる「詩の欠片」を拾い集めていくさまを描く。たとえば、冬の雪景から、笑い声が聞こえる

短歌 | すれ違い

ただ聞いて ほしいと思った だけなのに わきみちに逸れ わたしのせいね ひとはみな 地球のヘソに 生きていて メタの視点を 得ることもなく 文字の先 想像力が 足らなくて 病んでる君に 気づくことなく ズタズタに 切り裂かれゆく 精神も 見た目変わらず 人知れず病む 最悪の タイミングほど 来るLINE 既読スルーも 難しいもの ひとはみな いつもどこでも 泣き笑顔 涙隠して 無理に微笑む 考えず 返す言葉は 消えないで つなぎ合わせて 君をうらやむ あのときの

[詩]メサイア(狂言)

マッチを売る少女に同情の念を向け偽善を語る 花向けの言葉でなくてまだまだ頑張れる精を出せと 圧死される未来に他人行儀を重ねてシラを切る あばずれになれとでもいうの?収束点はどこあるのかと 誰かを傷つけることに快楽を得ている ジレンマがシナプスを揺らし インモラリティを感じて気持ちいいでしょ? 猛り立つ声はいつも何も聞こえない 紙吹雪を浴びたいと呟く 返り咲くそもそも咲いていない 腐るだけじゃ嫌よと 今我は勇者から英雄に成るのだ 画期的な広がる格差は埋められない底なし沼る

[詩]あゝ、またΨ

おはよう、おやすみまで言えたならなんてさ どんなに幸せだろうか 見えない未来を描こうとしてインク切れ 最後にワガママを一つ聞いて欲しい 明日もまたΨ 辛ラーメンのカプサイシンは辛辣な現実 犬に吠えられて鳥に盗まれたソフトクリーム あゝスクロースのように甘い現実に浸りたい 瞬きは走り出す合図 眠たさを誤魔化すスパイス 泣き出しそうなアヒル おはよう、おやすみまで言えたならなんてさ どんなに幸せだろうか 見えない未来を描こうとしてインク切れ 最後にワガママを一つ聞いて欲しい