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実質株主とは何か?

割引あり

本記事は、「実質株主」について株式実務経験者が独自の視点で解説した記事です。(所要時間:20分)



序章

はじめに

株式市場に関連するニュースを読んでいると、しばしば「実質株主」というワードを見かけることがあります。最近の主立った例としては、株式市場における各種施策を検討する文脈の中で出てくることが挙げられ、投資家との対話を促進するための施策や、大量保有報告書制度の見直し、公開買付制度の見直しといった施策等がそれに当たります。日経新聞においても、ここ最近の記事で実質株主をキーワードにした記事がいくつか散見されています。

※ 「大量保有報告見直し、運用機関の特例 企業と対話促す」(2023年3月2日)、「実質株主の日々開示が不可欠 日本企業、統治の課題」(2023年4月6日)等

また、上場会社のIR担当者や株主総会担当者等、日常業務として投資家とコミュニケーションをとる部門にいらっしゃる方でしたら、実質株主はお馴染みの存在ということになります。

そんな実質株主は株式市場では欠かすことができないプレイヤーなわけですが、では、実質株主とはいったい何でしょうか?これについて表層的に解説されたネット記事等はありますが、その実態についてはブラックボックス化されているせいか、本質から紐解いて解説したものは中々ありません。

そもそも、株主に「実質」という言葉がつくのはよくわからないですし、なぜそのような概念が生まれたのか、その背景から紐解いていかないと、なぜ実質株主という存在が各種背策の検討するべき論点として出てくるのか、理解を深めることは難しいといえます。

本記事は、株式実務経験者が独自の視点で実質株主について解説をしたものになっており、株式実務の現場で使えることはもちろんのこと、株式市場の仕組みを深く読み解くのにお役立ちできる内容になっているのではないかと考えています。

主に想定する読者

  • 株式市場の仕組みを深く理解したい方

  • 経済ニュースをより深く理解したい方

  • 上場会社の株式実務担当者

  • IPOを予定している会社の株式実務担当者

 

本記事の構成

第1章(1)(2)では、実質株主とは何か?その定義を明らかにした上で、実態をつかみづらい株主名簿との背後関係を、構造的に整理しました。1.(4)では実質株主の範囲についてよくある勘違いを言及し、最近では、その実質株主の範囲が広がりをみせてきている傾向にある点を言及しました。

第2章(1)では、そもそもなぜ実質株主という概念が生じたのか?その理由をアメリカでのカストディ業務の発展の例を中心に解説しました。5.(2)(3)では、証券保管業務を担うカストディアンとプライブブローカーの業務内容、それから両者について株式実務担当者としておさえておきたい実務上のポイントを解説しています。実務上よくある勘違いとして、グローバルカストディアンの背後には海外運用機関が隠れているという誤解がありますが、必ずしもそうとは限らない点を、理由を含めて解説しました。

 

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