3行日記(柵、ラグビー、八朔)
十一月十六日(木)、くもり
駅の改札から出てすぐの通りに、ある日、柵ができた。その道筋は、赤提灯の居酒屋や小料理屋、人気のラーメン店などが集まるガード下へと続き、一杯ひっかけて帰ろうかという呑兵衛や、雨の日に濡れるのを避けながら駅に向かう人たちにとって、日常に欠かせない獣道だった。そんな道が塞がれてしまい、みな困惑した。
柵ができたばかりのころは、これまで通りに道路を渡り、渋い表情で柵を跨いで、不平不満を口にしていた。やがて、不満を感じつつも、遠回りをしぶしぶ受け入れるようになり、数ヶ月もすぎると、すっかりその変化に慣れてしまい、何の感情もわかないまま順従に、少し遠くの信号のある交差点の横断歩道を渡るようになった。今や、不平不満を感じていたころの記憶すら薄れ、ただただその状況を受け入れてしまっている。ふと、そのことが怖いと感じた。
はじめのころは、ガード下の居酒屋の柱に貼られた抗議文が物珍しく映り、注意深く目にしたものだが、今も変わらず貼られたままの薄汚れた張り紙のことを、すっかり気にかけることはなくなった。直接的に、また間接的に、闘いつづけている人のことを考えてみよう。
夜、八宝菜もどき、柿。チャックの散歩、区役所の交差点を南へ、いつもの公園を通り抜けていると、いつぞやの夜も見かけた、お父さんとラグビーの練習をしている女の子がいた。前回はアーモンド型のボールを回転させながら横に滑らせてキャッチボールをしていたが、今夜はボールを胸の前に抱えて走るお父さんの前に女の子が立ちはだかり、ディフェンスの練習をしているようだった。公園の隅で、まだ緑色の八朔の実が大きくなってきた。
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