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『Audible 無理ゲー社会』橘玲(2021・小学館新書)

きらびやかな世界のなかで、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」という困難なゲーム(無理ゲー)をたった一人で攻略しなければならない。これが「自分らしく生きる」リベラルな社会のルールだ。(本書より)
誰もが「知能と努力」によって成功できるようになったことで、社会は「(知能の高い)上級国民」と「(知能の低い)下級国民」に分断される。ベストセラー作家が知能格差のタブーに踏み込み「理不尽なゲーム」の正体を解き明かす衝撃作。

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今回は陰謀論のトコが面白かったのでメモっておこう。

脳は陰謀論で思考する

オウム真理教の信者やQアノンの信奉者はなぜあんな陰謀論にはまるのかと疑問に思う。だがこれはそもそも問いのたて方が間違っている。
人類が数百万年の間生きてきたのは近代化以前の世界で頼るものは経験と単純な因果論しかなかった。科学的な世界観が確立したのはせいぜい400年程で人類史の0.01%にしかならない。私たちの祖先は日食や月食が地動説で説明できることも感染症が病原菌やウイルスによって引き起こされることも知らなかった。世界が全くの暗闇だとしたら何がどうなっているかわからないまま物事が次々と起きるのだから物凄い恐怖だろう。この根源的実存的不安から逃れるためにはあらゆる出来事は説明され意味を与えられなければならない。こうして神話や宗教が生まれたが科学的な知識がないのだからそれらは神秘的呪術的なものになるしかない。人の脳は元々陰謀論的に思考するよう設計されているのだ。
その後近代の啓蒙主義とともに私たちの世界観は大きく変わったが、これは陰謀論が科学に置き換えられたわけではない。近年の脳科学は意識という中央管制室が全体を統制しているのではなく、脳内では進化の過程の中で作られたいくつかの異なるネットワーク・モジュールが独立に活動しているとする。赤いシミのついたセーターを殺人事件の遺品だと説明すると手に取ろうとする人はほとんどいない。そこに何か不吉なもの、被害者の霊や怨念がとりついていると感じるのだ。目力というのは物理法則に反して目から何らかの光線が出ていると感じることだ。こうした例はいくらでもあり、私たち、無意識はいまだに呪術的世界を生きている。意識理性は地動説でも無意識は天動説のままなのだ。
そのように考えれば、問うべきは「なぜ陰謀論に嵌るのか」ではなく「陰謀論を信じる人がなぜこれ程少ないのか」だろう。

やはり出てきた。進化と脳科学!

その他キーワード:「公正世界信念」「自尊心」

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陰謀論と聞いて思い出されるのがチョット前に読んだ中世の魔女狩り。

それから京アニの事件も。
あの事件には驚いた。まず死傷者数が尋常じゃなかったことと、犯人の主張が不思議すぎたことが印象深かったのだ。
だってあんなのパクリだなんて思えない。「あいうえお」の「う」しか被ってないのに、「あいうえお」の全てを「=う」とするかのような違和感を感じてしまう、
だけど、本人にとっては『京アニにアイディアを盗まれた』ってのが厳然たる真実のストーリーなのだろうし、橘先生によればまさにこれこそが人間本来の脳の在り方ということになる。
んじゃあこういう事件がおきてもしょうがないのかもーーー
って、いやいやいや、しょうがなくない。被害を受けて命を落とされた方が可哀想すぎる(悲)

そして度々登場するトランプネタ。
あの方、やはり存在が濃ゆい!


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