事業がぐんぐん伸びる、グローバル化の捉え方(第5回/全8回)
(2020年3月14日掲載、https://kuroshiohr.com/2410/より転載)
下剋上のグローバル経営(1/4)
くろしお経営が多くの組織に推奨するのは、<各個撃破>のグローバル化。
その運営方法のかなめが、「下剋上」です。
下剋上とは、下位の者が上位の者を追い抜き、序列が入れ替わることというのは、説明するまでもありません。
が、重要なのは入れ替わる方法。
下位の者が上位の者と同じことをしていては、入れ替わることは不可能。
これまでにない戦術を生み出す、新しい道具を早く導入することがカギになります。
戦国時代を例に取れば、織田信長の鉄砲隊や、豊臣秀吉の水攻めなどが、時代や組織内での序列を大きく変えています。
今風に言えば、市場や組織に新たな付加価値を生み出せた者が、下剋上を達成できたということ。
そういう意味で、数値目標に対して、同じようなアプローチをして、誰が一番の業績を上げたかという、「競争」とは大きく違います。
時代IIの組織構造の場合(第3回を参照)、目標も戦略もトップダウンで与えられ、各海外拠点はその達成を求められます。
「競争」を促すにはうってつけの組織構造。
一方、<各個撃破>の組織体制は、「競争」には適しませんが、「下剋上」を促すにはおそらく最適です。
本社から「下剋上」を促す上でのエンジンが、海外投資方針策定・実行、資金調達という本社の役割。
単なる数値目標の達成度ではなく、良質プラクティスの創出と他拠点への共有、良きパートナーシップの構築など、より付加価値の創出ができる海外拠点に、より大きな投資をしていくというガバナンスです。
逆に、付加価値が創出できない海外拠点への投資は減らしていきます。
付加価値を生み出す海外拠点
さて、本社がそのような促し、ガバナンスをすることを前提に、海外拠点はどのように動いていけば良いでしょうか?
本社から投資を引き出すためには、付加価値の創造ができる可能性が高いと思ってもらう必要があります。
その「可能性」を測る2つの指標が、①海外拠点自体の実力と、②海外拠点がある市場の魅力です。
2つの指標を縦横2軸に取ったのが次の図;
例えば、政治的にも経済的にも比較的に安定しており、実力のある日系企業の拠点も多いタイ。
現在のタイと、四半世紀前には現在のタイ市場・拠点と同じような状況であった、香港・台湾の市場・拠点の比較を、この図に当てはめてみます;
香港や台湾に関しては元々教育レベルも高く、私が関わった日系企業の現地社員の方々のレベルも高い。
しかしながら、市場の魅力の減少と共に、本社からの投資が減り、組織全体としては徐々に相対的に実力が落ちていってしまっている拠点が多い。
タイ拠点に関しては、市場の魅力も相まって、現在は本社が多くの投資をしている企業もたくさんあります。
しかし、高齢化問題等、今後市場の魅力を落とす要素も見られ、将来、香港や台湾の拠点と同じ状況に陥る可能性もあります。
と、このような見方ができます。
本社からより大きな投資を引き出すためには、この座標軸のなかで、自拠点が相対的にどこに位置するかを理解することが第一手。
その上で、次の2つのうち1つが少なくとも必要になります;
・組織としての実力をつけていく
・市場の魅力を上げていく
グローバルグループ内で求められる役割を遂行できていない、座標軸の右側に位置する拠点。
これらの拠点は当然、そこに達せられるように実力をつけていくことが第一。
一方、すでに十分な実力がある座標軸の左側にある拠点。
これらの拠点は、組織の機能を徐々に拡大していき、新規事業も含め、良質プラクティスの創出を目指します。
また、地場の優良企業を発掘し、パートナーシップを結ぶなどの付加価値の出し方もあるでしょう。
加えて、左側の拠点、特に左下の拠点は、本社に対して、市場の魅力を上げていくことも重要になります。
「国=市場」としてしまえば、その時の国の勢い次第になってしまいます。
経営陣としての本社からの派遣員が、そういう見方しかできなければ、拠点の存在感は、市場の魅力と共に下がってきてしまいます。
しかし、香港や台湾の日系企業拠点をつぶさに見れば、市場の見方を変えることで、香港や台湾の経済鈍化に抗ってきた/抗っている企業がいくつもあります。
香港と広東省を一つの商圏として事業を伸ばしたり、台湾拠点から東南アジア向けの商材を作ることで東南アジアまでを市場としたり。
また、同じ国の中でも、ターゲットを広げるなどで市場の魅力を引き上げられる可能性があります。
いずれにしても、所在する国の経済の勢いだけに左右されず、本社に対して常に魅力的な市場であることも、海外拠点の腕の見せ所になります。
当然、本社からは、このような座標軸に海外拠点を並べながら、どこに厚めに投資をしていくかを決めていきます。
言い方を変えれば、海外拠点間の「下剋上」をあおっていくわけです。
ある意味、海外拠点にとっては、同一な目標・方法で業績を競う「競争」よりも難しいかもしれない。
でも、その分「下剋上」のほうが付加価値の出し方も自由ですし、その方法にも、より自由度が与えられるべきです。
例えば、一カ所ごとは小さい東南アジア各国の海外拠点が、主体的に連携し合い、東南アジア全体を商圏とすることも、この仕組みでは許容されるべきです。
そうすれば、中国や北米など大市場を持つ拠点に対して、「下剋上」を起こせる可能性が出てきます。
中国や北米の拠点の力が落ちての「下剋上」でなければ、その組織のグローバルグループ全体の成長に繋がっているはずです。
今回のブログは一旦ここまで。
今回は組織としての海外拠点について書きましたが、次回のブログでは、海外拠点の社員にスポットを当て、「下剋上」マネジメントがどのように影響するかを考えたいと思います。
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