見出し画像

大人になって読書感想文(2冊目)

〈参考文献〉
藤井一至(2018) 土 地球最後のナゾ 光文社

この本は、2021年2月3日(水)放送「笑ってコラえて!」の特集を見て知りました。

元々、誰もついていけないような分野の話をやばい温度感で話す人が大好きなんですが、著者の藤井一至(かずみち)さんからはテレビ越しでありながらその熱量をたっぷり感じて、この方の本を是非読んでみたいと思いました。

内容は、世界中の土を紹介する本です。

動植物、昆虫、キノコなど、一般的に自然科学の分野では理解するために覚えなければならない名前がたくさんあるのに対し、土壌学で覚えなければならない土の名前はたった12種類。
これは楽だ!と思ったことがきっかけ…では無いですが、そんな出会いから世界にたった12種類しかない土をコンプリートしようと旅に出た珍道中と、そこから見える日本の土の話、世界の土の話、宇宙の土の話(宇宙に土は存在しないという結論ですが。)が語られています。

「カバンにつめこんだのは、長靴とスコップだけだ。12の土をめぐる旅を始めよう。」(p.54)

男子ならではの感覚なのかもしれませんが、「12個の宝物を求めて旅をする」ということに心を奪われました。当然、何となく当たりをつけてスコップで掘ったら終わりということはなく、まずは12種類の土の性質に始まり、気候・環境・歴史等、色々な事を理解し、考察して現地へ赴きます。

それでもお目当ての土にはなかなか出会えないこともあり、第五の土、ポドゾル編は怒涛の展開でした。

「高校地理の教科書では、…(中略)…ポドゾル分布域として北海道がべったりと一色に塗られている。ところが、実際に北海道を訪ねて土を掘ってみてもポドゾルは出てこなかった。」(p.88)

オチは、ぜひ書店へ。

また、12の土の中で、私のお気に入りは第六の土、「世界で最も肥沃なチェルノーゼム」(p.101)です。

チェルノーゼムはカナダの中でも知名度が特に低いことで有名なサスカチュワン州で見られ、本書では、そこでチェルノーゼムが肥沃な土になる奇跡的なメカニズムが紹介されています。

そのメカニズムのうちの一要素が、プレーリー地帯に生息するジリスです。見た目がリスでやることがモグラみたいな生き物で、写真しか見ていませんが絶対にかわいいと思います。ジリス達が辺りの植物を食べてフンをして、穴を掘ってそのフンと土をかき混ぜることで、地下深くまで肥沃な土が浸透するのだそうです。

という難しい話はさておき、チェルノーゼム、というかジリスが見てみたいです。

最後に、本書のサブタイトル「100億人を養う土壌を求めて」というテーマが、本文の中でも多く語られています。砂漠化や人口増加によって、21世紀中には世界的な食糧危機が訪れるかもしれないとされる昨今、火星に新しい土壌を探しに行こうとする発想もさることながら、藤井さんは、

「地球の土も頑張っている。」(p.213)

とおっしゃいます。私のような一般人が食糧危機に立ち向かうためにできることは少ないかもしれませんが、自分に恵みを与えてくれる土のことを知ることは、その第一歩になると思いました。

ただ、虫に襲われるようなので、土のフィールドワークには全く魅力を感じませんでした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

#読書感想文

192,621件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?