見出し画像

自分で決めた読書感想文なら楽しいよ(3冊目)

〈参考文献〉
大泉洋(2015) 大泉エッセイ 僕が綴った16年 角川文庫

職種にもよるのかもしれませんが、私は社会人になってから、人と接する機会が増えました。

大ボケをかまして、「お前アホやなー!」と、かわいがられる人。
逆に、絶妙な距離感のツッコミを上司に入れて重宝される人。
歩く六法全書みたいにバリバリのインテリ発言で拍手を浴びる人。

人と接する機会が多い仕事ということは、必然的にそういう人達が評価されて、活躍していくことになります。

なので、そういう人を惹きつけるような個性とか、その個性を武器に活躍している人には憧れがありました。そういうわけで、大泉洋さんのエッセイを読んでみることにしました。

大泉さんのファンは全国にたくさんいるので、大泉さんの魅力は挙げたら山ほどあると思いますが、私としてはやはり、話が面白くて、とにかくスベらない、というイメージがあります。

この点については、本書で答えが書かれていました。

「いつの日かもう一度『綾町』に行き、そして今度こそ恋の『あやまち』をおかしてくるのだ。・・・歌丸です。」(p.137)

タチの悪い週刊誌ばりに言葉の切り取り方が間違っているような気もしますが、あくまでも、おしゃべり大泉さんの原点は落語だった、という説明をしたいがための引用です。

どこまでの本気度かは定かでないですが、全編落語調で書かれているエッセイなどもあったので、趣味なのは確かだと思います。
作中、笑点メンバーの名前しか引用されていなかったので、にわかファンの可能性もあります。

と、ツッコミどころ満載の、大泉さんが過去に雑誌の連載として書いたエッセイが本書にはたくさん書かれています。連載した雑誌ごと、時系列に沿って、以下のような構成になっています。

①雑誌an「洋ちゃんのシャイなあんちきしょう」24歳〜28歳
②雑誌じゃらん「大泉洋のワガママ絵日記」27歳〜32歳
③雑誌「SWITCH」31歳〜32歳
40歳の書き下ろし
42歳の書き下ろし

一通り読んでみて何より嬉しかったことは、「大泉洋とて、始めからスベり知らずだったわけじゃなかった」ということを知れたことでした。

①雑誌anでの連載は大泉さんが今の私よりも若い24歳から書き始めたエッセイです。その年から雑誌で連載を持っているというのはめちゃくちゃすごい、という当たり前の世辞はさておきまして、この当時の文章からはなんというか、若手芸人さんみたいな乱暴さを感じました。

ネタはどれも面白いのですが、何か、「どうだ、おもしろいだろぉ〜!!」と訴えかけてくるような気がして、爆笑というか、ニヤニヤして読むようなところがいっぱいありました。

誰しもこういう時期を経て、本当に面白い人になっていくんだなと思うと、勇気をもらえました。とても共感しました。

②雑誌じゃらんのエッセイからはもっと洗練されていて、まさに、「スベらんな〜」と言いたくなるような作品の数々でした。ただ、同時に人気が全国区となりめちゃくちゃ忙しくなって、今回は全然原稿が書けませんでした!というネタで笑かしてくる作品がいっぱいあったので、ずるいと思いました。

③雑誌SWITCHのエッセイは、構成や言葉選びなど、さらに成熟された文章でした。大人の人が、「ふぅん、なるほどねぇ〜」と思いながら味わえる作品だったと思います。「ふぅん、なるほどねぇ〜」と思いながら読みました。こういう感想になるのは、前から読んでいったからだと思います。

全体を通しては、風景やそこにあったもの、人、また、人に関しては、姿形から性格まで、あらゆる物事を見て聞いて感じて、それらを自分のものにする能力がとても高い人なんだなと感じました。

そしてそれらの、特に人の魅力に関しては、大泉さんが彼らに対してリスペクトの心を持って接しているからこそ引き出せるものであって、書かれる文章からも愛がほっこり感じられました。

最後に、本書では、エッセイを書いた当時の文章に対して、2013年の大泉さんが振り返りコメントを書くことになっています。
その時点でもまだアップデートできていなかった情報がありました。

「マスターの口も滑らかである。〜(略)〜どうやら業界人の客に、自分の店で寿司を食ったアーチストが全員紅白に出たと自慢しているようだ。〜(略)〜私が来てしまった以上、今年の紅白はパーフェクトではない。」(p.254)

当時の若かりし大泉さんは、その後自分が白組の司会をすることになるなんて、知る由も無かったのです。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?