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アイムシリウス。

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特にやりたいことは無い。でもつまらない人生にはしたくない。これまで、悪くはないけど別に良くもない人生を送ってきた瀬名月見(セナツキミ)には、みんなから羨ましがられる「女優」の彼女…
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2024年8月の記事一覧

小説「アイムシリウス。」(14)

小説「アイムシリウス。」(14)

「あっちの方はオーディションやってるからあんまり近づいちゃダメだよ。声もダメ。あとこっちがトイレ。この階のやつしか使っちゃダメだって」
 夏来こころ(ナツキココロ)が初めてオーディションにやってきた瀬名月見(セナツキミ)のために、会場の案内をしている。月見は入り口で一通り案内スタッフから説明を聞いてきたので全部知っていたが、今はとにかくこころが側にいてくれるのがありがたくて、熱心に説明を聞いていた

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小説「アイムシリウス。」(13)

小説「アイムシリウス。」(13)

 燈孝之助(アカシコウノスケ)は夏来こころ(ナツキココロ)にイライラをぶつけていた。
「ほらあいつらも!もうこんなに応募者が殺到すんなら、カップル応募以外に受かる道なんかねぇだろ!」
「そんなに自信無いならやめときゃ良いじゃん」
「あ!? あるわ! そもそも選ぶ側に俺らを選ぶつもりが無ぇだろって話」
「うるさいなー、済んだことをいつまでもごちゃごちゃと。女子か」
「元はと言えばあんたの彼氏のせいで

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小説「アイムシリウス。」(12)

小説「アイムシリウス。」(12)

 まだ完成して間もなく、よく整備された公園の広場は、快晴の天空とよく釣り合っている。広場にはベンチが点在しており、それらの中でも、真後ろに色とりどりの花が咲く花壇が添えられ、一際映えを狙えるロケーションが、今日撮影するシーンの芝居場であった。芝居場付近にはドライ(カメラ抜きで行うシーン通しリハーサル)を終えたばかりの、ヒロイン清子(サヤコ)を演じる白羅真鳳(シララマトリ)、清子が目撃するカップル役

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