見出し画像

【随筆/まくらのそうし】 梅桃(ユスラウメ)

 今年は日照りが続いたか、ユスラウメが不作である。

 不作と言っても、実は成って、赤く熟れてはいるのだが、まるで冷蔵庫にほったらかしのリンゴのよう、しなびてまるで元気がない。

 無論、食べても不味いのである。

 日照りが続いたとは言えど、ただ暮らす人には気持ちの良いもの、農業には困ったもので、特に水ばかり必要な田んぼでは、死活問題といったところか。

 それでもここらは水の豊かで、下流の人は頭を抱え、温暖化に水不足、エコだなんだと言いながら、人が暮らしを改める様子は微塵もない、皆、お口ばかりが達者である。

 雨の降らぬ五月にも、山には他の果実も成る。人のため、天に雨を乞うたとて、誰も水に困っているとも思わなければ、雨乞うこちらを笑うだけ、どうにも空しいことである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?