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 ひと月も早く、夏が来る。

 遅い梅雨入りはいままでもあるが、それはそれ、入りが遅ければ明けるも遅く、七月の終わり、ようやく雨上がりの青空、強い日差し、川にでも飛び込んで涼まねば、やっていられないという暑さがやってくるという手筈が、暦を読み違えたかのような季節の到来、田をやる人は気が気ではないだろう、潤沢な水を誇る山ですら、水のなく、道端の立て看板、何かと見れば、取水制限の注意書き。

 その日を生きる動物ならば、本日の晴れをただ享受すれば良いものの、動物であることから離れ、いまはない未来という概念を信じ、信じなければならない人ならば、その無いもののために気を揉んで、なんとかせねばならないとその思い、資本主義社会の良い食い物、その社会に生きる限りは、大きく状況も変わらぬだろうに。

 人のせいで環境が──そう言うのなら不自然を強いる仕組みを止めよ、とはこうして言ってはみても、不自然に生きる人々は、それを己の意志と思い込み、真っ直ぐに生きているつもりゆえに、この一言も届かない。

 世界は思うよりもとても豊かで、人の根本は優しさであるのに、社会の仕組みに煽られて、誰もそれを信じないのだ。

4/6/30 

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