Photo by yuhako333 【随筆/まくらのそうし】 新芽 8 黒澤伊織@小説 2022年7月5日 14:00 新芽の美しいことである。 中でも、藤の新芽は夕暮れの色、赤紫と青をもって、柔く細い蔓からしなる。 そこに銀があるのは、産毛の生えるためであり、その天鵞絨のような手触りは、上等な毛皮に触れるようだ。 あるいは、椎の新芽は傘のよう、枝の先からふわりと垂れて、まるで羽化し、羽を乾かすトンボのように、じっとそのときを待っている。 固く、青い葉になるときを、いまは赤みがかった柔らかさで、木の高く、誰も触れられなければ、太陽に一番近い場所で。 ダウンロード copy #春 #田舎暮らし #初夏 #藤 8 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? 記事をサポート