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【随筆/まくらのそうし】 新芽

 新芽の美しいことである。

 中でも、藤の新芽は夕暮れの色、赤紫と青をもって、柔く細い蔓からしなる。

 そこに銀があるのは、産毛の生えるためであり、その天鵞絨のような手触りは、上等な毛皮に触れるようだ。

 あるいは、椎の新芽は傘のよう、枝の先からふわりと垂れて、まるで羽化し、羽を乾かすトンボのように、じっとそのときを待っている。

 固く、青い葉になるときを、いまは赤みがかった柔らかさで、木の高く、誰も触れられなければ、太陽に一番近い場所で。

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