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【随筆/まくらのそうし】 綿毛  

 それが例えばキリンなら、首の短い個体が淘汰されたのではなく、高い木の葉を食べたいという強い願いが、ある日、首の長い突然変異を生んだのだと、そう考える方である。

 まったくそうでもしなければ、どうして花にそっくりなカマキリや、ド派手な色の鳥たちがいるだろう。

 もっとこの花っぽくなれば見つからないじゃん、ここに差し色入れたらお洒落じゃん、だから我々はこうなりたいのだ──そんな思いが昇華して、それらはきっと、いまの姿になったのだ。

 そんな考えが正しいとすれば、それはここにももう一種、たんぽぽの綿毛に憧れた、一匹の虫の姿が見える。

 お尻にふわふわの綿毛を生やし、風に乗って飛んでいく、小さな夢の体現者ワタムシ。

 もっとも、綿毛で飛ぶというアイディアは、たんぽぽが先か、ワタムシが先か──もしくは雪虫とも呼ばれるその名の通り、すべての手本は空から舞い散る綿雪だったのかもしれない。

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