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命とは、どこに宿るものかと考える。

 命とは、どこに宿るものかと考える。

 例えば、それは冬の朝、キャベツの葉に凍り付いたアオムシが、日の光にゆっくり溶けて、そうしてやがて動き出すとき。

 例えば、大きなさなぎが潰れ、青と白の、絵の具のような色を流すとき。

 藤のつるが支えを探し、中空へと伸びるとき。

 雨の後、草の一斉に伸びるとき。

 果実が赤く実るとき。

 切り倒した樹木の、春にひこばえが激しいとき。

 蝶の死骸の、あまりに軽いとき。

 足の欠けた虫が、どことも言わず歩くとき。

 積もった落ち葉の、いつの間にか黒く腐り、土となって、誰かの種を育むとき。

 動くものが命でもないが、人がそう思うのは、命というその言葉、定義したのが人であり、人は動くものであるから、そうして動くものにしか、命を感じぬこともあろうが。

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