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【エッセイ】 カニのご馳走

 珍しく、カニが左鋏に何か持ち、道を歩く姿を見かける。

 ボルトの軸か、それとも細いジャバラの部品か、そんなような見た目であるので、不思議に思い、じっと見る。

 長さ2センチ、直径1センチ、その筒状のものの中心から、何かでろっとしたものが覗いている。色は褪せたような灰青色。と、ここで正解、その正体を理解した。

 これは青紫の大ミミズ、かんたろうの切り身である。

 雨に姿を現して、道を歩いていたのは見かけたが、まさかこんな姿になろうとは。

 30センチはあっただろう、かんたろうはなぜ死んだ、死んで刻まれて十五切れ、カニの鋏に挟まれて、お持ち帰りの大ご馳走。

 世はまったく、諸行無常というわけである。

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