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【エッセイ】 ツバメとトンボ

 益虫、益鳥なんてものは、人の勝手と分かっていても、その勝手な人類としては、それ同士で争うことなど、止めて欲しいと願うものである。

 この具体例が、軒に巣作るツバメの親が、ヒナにトンボを捕ることである。

 ツバメと言えば、田んぼの害虫、蛾やら何やら食べるという、ザ・益鳥という類い、古くから人に愛されて、ツバメが低く飛べば雨が降る、など、日常親しまれる鳥である。

 一方、トンボという虫は、ヤゴの時代はボウフラを食べ、羽を得ればウンカなど食べと、これもザ・益虫という類い、オニヤンマにシオカラトンボ、赤トンボ、多彩な種類に親しみのある。

 この人に利益ある鳥と、利益ある虫が戦えば、当然ながら鳥の勝ち、というわけで、そのツバメのくちばしに、つままれ、運ばれるトンボたち。

 いやいや、自然とはこういうものだ、これがヒナの育つためならば、トンボの命も巡るのだ──と、そう簡単に、このお話が終わらないのは、幾ら大きく口を開けると言っても、小さなヒナの小さなお口、そこにトンボは大きすぎ、食べられないと大合唱、そうかそうかと親ツバメ、捕ったトンボをポイと捨て、飛び立ち、何を思ったか、再びトンボを捕まえて、ヒナの抗議に再び捨てて、それを繰り返していくうちに、巣の下、トンボの死骸は五、六匹、九匹、十匹と、ただ増えていくからだった。

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