小説 『何が、彼女を殺したか』 (6)
▶︎目次
愛の章(後編)
いまから31年前。丸2日続いた陣痛の末、しわくちゃの真っ赤な顔で産声をあげた私の娘は、それからたった6年でその短い生涯を終えてしまった。その娘の名前は真紀。彼女は病気や事故ではなく、村野正臣という男によって殺されたのだった。夏休みが終わって二学期が始まったばかりの、けれどまだ暑い日の夕方に。
あの日──何の予感も私を止めることをしなかったあの日、私がパートから帰ると、その幼い娘は真っ赤な血の海の中に横たわっていた。玄関からリビングへ続く廊下