雪は、浮気相手だ。
雪が降っている。
東京に住み始めて約5年くらいだが、雪が積もったのはまだ数回しかないイメージだ。
年に一回積もるかどうか、積もっても数センチという感じである。
俺の地元、三重県も同じような感じだった。
三重の中でも山間部ならめちゃくちゃ積もるのだが、俺の住んでいた鈴鹿市は東京と変わらなかった。
まあでも、このくらいが1番いいのかもしれない。
雪がよく積もる東北や北陸は冬がしんどすぎるし、逆に九州や沖縄で雪を経験できないのも悲しい。
1,2年に一度のペースというのが最も雪のありがたみを感じられることだろう。
今日はバイトだったが、電車が止まる前に帰ってくることはできたので特にストレスもない。
むしろ、雪が積もっている道を歩くのはテンションが上がる。
もし電車が止まって帰れなくなっていたらブチギレていただろうが、今日は帰れたので全然嬉しかった。
ちょうど5年前の1月から3月。
岐阜のスキー場でリゾートバイトをしていた。
4月から養成所に入るため、住み込みで働いてお金を貯めていたのだ。
その時に人生で初めて、自分の身長より高く積もっている雪を見た。
最初の3日くらいはそれだけで楽しかった。
でかい雪だるまを作ったり、雪にダイブしたりして遊んだ。
だが、4日目からはもう何も感じなかった。
雪というのはその程度のものなのである。
一緒に住み込みで働いている人の中に、鹿児島出身というやつがいた。
鹿児島では雪が降らないらしい。
その人は「人生で初めて雪を見た」「鹿児島では火山灰しか降らない」などと言いながら、興奮して外を駆け回っていた。
大きなかまくらを作って、「自分の家だ」「ここに住む」と言い張った。
だが、4日目には暖かい寮から出なくなった。
その程度なのである。
たまにしかできないから雪だるまを作ったり、雪合戦をするのは楽しいのだ。
毎日できるならすぐに飽きる。
そもそもよく考えれば砂場遊びと大して内容が変わらない。
大人が楽しめるような遊びではないのだ。
まあ、スノボやスキーはすごく楽しいと思う。
俺は運動音痴で怪我しそうになるので好きじゃないが、あれは特別感があっていい。
あれは砂場遊びではなく、サーフィンみたいなものだ。
スキー場のような施設でしか出来ないことだし、あれは別に飽きないだろう。
自分の住む場所に毎日積もる必要はないが、まあ年に1回くらいなら雪だるまを作ったり雪合戦をするのは楽しい。
いつもと違う特別感がいいのだろう。
雪は、浮気相手なのだ。
とても綺麗で魅力的だが、美人は3日で飽きる。
雪と浮気するのは楽しいだろうが、あんな冷たい女と結婚するのはかなりしんどい。
結婚したいのは地味でも自分を支えてくれる、曇り空だ。
澄み渡る晴天でも、綺麗な雪でも、恵みの雨でもない。
曇り空なのだ。
特別な日は、なんてことのない日があるからこそ楽しめるのである。
おしまい。
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