痴漢に遭遇した話。
今日は新宿で朝9時からバイトだった。
朝起きることは別にしんどくないが、平日この時間は満員電車が辛い。
案の定、既に満員なのに人がどんどん押し込んで入っていく。
だが俺もその1人なので他人に文句は言えない。
俺より後に小太りのおじさんが入ってきた。
ギュウギュウ詰めの状態にも関わらず、鞄を床に置き、ずっとゴソゴソしている。
なんか怪しいなと思った。
鞄の中にカメラでも仕込んであって盗撮しているのでは、という考えが頭をよぎる。
だとすれば、おそらく俺の斜め後ろにいる30代くらいのお姉さんが標的だ。
俺はこのおじさんが怪しい動きを見せたらこの人を守ろうと思い、おじさんを注視していた。
すると、お姉さんが俺の左太ももの辺りに手を置いてきた。
お姉さんもこのおじさんが怪しいと思ったのだろうか。
多分これは、何かあったら守ってくださいの合図だ。
絶対守ります、と心に決めておじさんを注視する。
しばらくするとおじさんは鞄から本を取り出し、鞄を肩にかけて本を読み始めた。
杞憂だった。
おじさんはただ本が見つからなくてずっとゴソゴソしていただけだったのだ。
疑って悪かったなおじさん、と心の中で謝り、俺もスマホを弄り始めた。
しかし、お姉さんの手は俺の太ももから離れない。
それどころか少しずつ内股の辺りに手が伸びてきて、ずっとサワサワとされている。
え?まさか俺が痴漢されてる?
いや、でも別に本体を触られているわけではないし、違うかも。
でもこの手はどういうつもりなんだ。
お姉さんの場所は、俺の内股のあたりに自然と手が当たる位置ではない。
後ろから握ってきているような動きだ。
というか、ずっと左太ももの何かを握っている感じがする。
スリか?と思ったが、それならこんな露骨に長い時間サワサワするのはおかしい。
左太ももに入っているのはPASMOと鍵が入っているキーケースだが、なにを握っているのだろう。
ずっと不安な気持ちだったが、お姉さんに触らないでくださいという勇気もなかった。
おじさんが痴漢したら捕まえてやるという気持ちだったのに、いざ自分が痴漢されると非日常的な状態にビビって体が動かない。
というか、俺はこのお姉さんを守ろうとしていたのになんで俺が痴漢されているんだ。
意味がわからん。
そんな状態で電車が進み、「まもなく明大前です」とアナウンスが流れた。
ここは乗り換えで降りる人が多い駅だ。
この駅ならドア前にいる自分達は、ここで降りたい中の人のために一度外に出る必要がある。
これで逃げれると思った瞬間、急にお姉さんの手の動きが激しくなりだした。
これは明らかに手を上下に動かしている。
怖すぎる。
到着した瞬間すぐに降りると、お姉さんは早足で立ち去っていった。
多分乗り換えだったのだろう。
とりあえず一安心だ。
しかし、俺の太ももの何を触っていたのか。
自分の太ももを触ってみると、ムニュッとする棒状のものの感覚があった。
取り出してみると、全てが腑に落ちた。
ハンギョドン、お前だったのか。
お前が、ちんこの代わりになってくれていたんだね。
ありがとうハンギョドン。
お姉さんはおそらく俺のハンギョドンをちんこだと思い、ずっとサワサワしていたのだ。
でもいつまで経っても硬くならないので、ムカついて最後に本気を出してきたのだろう。
危ないところだった。
普通に怖かった。
高校時代、電車でゲイのおじさんにケツを触られ続けたことはあったが、女の人に痴漢されたのは初めてである。
男で2回も痴漢されるってかなり珍しいのではないだろうか。
痴漢されやすい女の人の特徴とかあるらしいが、多分俺も痴漢されやすい男なのだろう。
冤罪対策はいくらでもできるが、痴漢対策なんか考えたこともない。
せめて本体だけは触られないように、これからもハンギョドンを仕込んでおこうと心に決めた。
おしまい。
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