ランナーの話:「富士子さん」前編
「黒リスさんのバージルクレスト50マイルの話を聞いたのが、きっかけですよ。」
NYのラン友の富士子さんは、ウルトラトレイルランナーだ。もう、何本も過酷な100マイルレースにチャレンジし、完走している。あの有名なウエスタンステイツ100マイルもその一つ。
だけど、2011年当時は、まだ、普通にロードを走るのが大好きな、アメリカ人の旦那様と10代前半の息子さんを育てる専業主婦の女性だった。
それが、ひょんなきっかけで、ウルトラトレイルレースと言う、山や森林など、大自然の中を昼夜ぶっ通しで走るレースが存在することを知り、彼女のランニング人生が、そして、人生そのものが変わったようだ。
いや、違う。逆かもしれない。
本来の彼女に戻ったのかもしれない。
なぜなら、彼女は20代の頃(多分)、オフロードバイクでオーストラリアを旅する冒険家だったみたいだから。
当時の写真を見た時、”ああ、富士子さんって、本来、こんな人だったんだ。ニューヨークという大都会で、今は、素敵な主婦をされているけど、好奇心旺盛で、じゃじゃ馬だったんだ。”と、思った。
女性の多くは、結婚し、子供を産むと、”◯◯ちゃんのママ”という名前で呼ばれることが多くなる。苗字も旦那様ものに変わると、本来の自分の名前を呼ばれることは極端に減る。家族の幸せは自分の幸せと思い、一生懸命、その役割をこなす。
だけど、当然、本来の自分は絶対、存在する。
自分が好きなもの、自分が好きなこと、それをやってこそ自分の人生。
息子もずっと見ていないといけない時期は過ぎた。
自分ももう50歳。後、何年、こんな挑戦が出来るか分からない。今、しかない。だから、走りたい。挑戦したい。
2011年後半、ウルトラトレイルレースの存在を知り、富士子さんは、その競技に魅了され、そして、彼女は決めた。
自分の最初の100マイルレースは、絶対、UTMF/ウルトラトレイルマウントフジ、だと。
(つづく)
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