スカイとマルコ(20)・積み重ねること
あたしと月子さんのトラブル続きだった毎日が、淡々とするものに変わっていった。
知らないもの同士が一緒に暮らすのに、最初から問題がないなんてことはないよね。ましてや、あたしは犬、月子さんは人間で、言葉も通じないし、人間が言うところの本能とか習性とかまったく違うもの。
人間が勝手に作り上げた世界が、まるで正しいみたいに押し付けられ、支配されるって、あたしは時として我慢ができないのだ。
でも、現実、あたしには選択権がない。それが、ますます、あたしをイラッとさせる。
だけど、そんなあたしに月子さんは、淡々と接し続けた。
毎朝の散歩、朝夕のご飯、ブラッシング、歯磨き、などなど、あたしに必要なことこなし、あたしが心地良く暮らせるようにと思ってくれているのも感じた。そう、あたし達犬は、言葉が通じなくても、直接、心から読み取れる。その人の思いを感じる。
月子さんは、自分で、「性格が悪い」って言うけど、あたしはなんか違うと思う。きっと、誰かに「性格が悪い」って言われたことがあるのかもしれない。あたしも、「困った子」「意地が悪い」「性格に問題ありの子」「難しい子」などなど言われてきたけど、勝手に言ってろ、と思っていた。
もしかしたら、月子さんもそうなのかな。あ、だから、”あたしたちは性格が悪い者同士”なのかな。酷い言われ方しても、参りましたってならないから。
そんな月子さんとの生活をあたしはちょっとづつ受け入れ始めていた。
下界も悪くないな、と思い始めていたんだ。
だけど、そんな矢先だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?