スカイとマルコ(19)・風が教えてくれる
僕は、車に乗せられ、甥ごさんちに行くことになっていた。
弁護士さんにも、そんな手続きをしていた。
「うちはお前の一生の面倒を見るのは大歓迎だけどな。でもなぁ、お前の方が嫌で、逃げたんだったら、仕方ないよな。」
家族とどんな話をしたのか、僕は分からない。
でも、僕は、時枝さんちからずっと離れた山の中で、車から降ろされ、「ほら、好きなところに行け。」と、しっしと追っ払われた。
車のテールランプが、小さくなっていくのを僕は、黙って見つめてるしかなかった。
真っ暗の森は、人間の真っ暗な心より、優しい気がした。
それでも、夜になると、寒くて、僕はブルブルと震えた。木の根っこの窪みを見つけ、自分の体温で自分の身体を温めた。
時枝さんとベッドの中で丸くなって眠っていた夢を見たいと思った。
僕も時枝さんに会いたいな。
神様、僕もことも、なんで一緒に連れて帰ってくれなかったの?
肉体があるって、中々、不自由だね。
でも、これが下界で生きるってことなんだよね。
僕のお腹がグーッと鳴った。
朝からご飯を食べていないことに気づいた。
お腹が空くのを感じるってことは、僕はまだ生きたいってことなのかな?
僕の身体は生きたがっているのかな?
なんのために?
あ、
僕の頭の中に、スカイの姿が浮かんだ。
スカイに会いたい。
僕は、スカイの気配や匂いが風のしっぽにくっついていないか、一生懸命嗅いだ。
南から吹く風に微かな気配を感じた。
僕は、久しぶりに目的に向かって歩く勇気が湧いてくるのを感じた。
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