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エッセイ:ぜんぶ

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愛犬の話、ニューヨークの話、ランニングの話などなど、その時々の気になったことをつらづらと書いています。
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#走る

ランナーの話:「黒杉さん」中編

まず、黒杉さんが、マイペースな走りから、レースやタイムを意識した走りに変わった理由からお話ししましょう。 私、黒リスの影響です。 最初、私がランニングを始めたと聞いた時、黒杉さんは断言しました。 「続かないね。マラソン?絶対、無理ですね。」と。 ご存知の通り、黒杉さんの予想は外れます。それどころか、2009年、初マラソンでサブフォー、ボストンマラソン資格まで取った黒リスには、軽く衝撃を受けたのかもしれません。しかし、その衝撃は、”黒リスさんを過小評価していたかもしれな

ランナーの話:「黒杉さん」前編

黒杉さんは、東北の宮城県石巻市に住むランナーだ。 この地名を聞いて、ピンと来た人もいるだろう。あ、ここは2011年、東北大震災の被災地だ、とか、もしくは、 あ、もしや、この人、黒リスの兄じゃない?と。 そうです、黒杉さんは、黒リスの兄。黒を強調するだけあって、色白の多い東北人の中ではブラックシープ的存在です。 本当は地黒ですが、ランニングで日焼けしているんだな、と最近は思われているかもしれません。つまり、結構、走っているわけです。 黒杉さんのランニング歴は、めちゃく

ランナーの話:「富士子さん」後編

運も実力のうちって言うけど、これはやっぱりおかしい。納得がいかない。 だって、シングルトラックで1時間以上も渋滞で一歩も進めず、1つ目、2つ目のエイドの関門は1時間延長されたのに、次のエイドが本来の時間の関門のままっておかしいでしょう?そこで800人のランナー達がアウトですよ。 2015年のUTMF100マイルレース後、富士子さんの中で、UTMFという大会への不信感が少し芽生えたようだ。 それと同時に、自分の実力を試したい。早く、ウルトラトレイル100マイルを走れる実力

ランナーの話:「富士子さん」中編

富士子さんのトレイル挑戦は、最初から順調だったわけではない。 黒リスも今なら分かるが、ある程度の年齢になると、トレイルはキツい。なぜなら、目がお年を取り、足元が見え難くなり、段差が分かりづらくなり、感覚神経から運動神経への伝達が鈍く、転びやすくなる。反射神経が鈍くなるのだ。ゆっくりトレッキングなら問題ないが、トレイルレースとなると、ある程度のスピードで進まないと関門に引っかかって、そこでアウト(棄権)である。 だが、富士子さんはボストンマラソン出場資格を持つレベルのランナ

ランナーの話:「富士子さん」前編

「黒リスさんのバージルクレスト50マイルの話を聞いたのが、きっかけですよ。」 NYのラン友の富士子さんは、ウルトラトレイルランナーだ。もう、何本も過酷な100マイルレースにチャレンジし、完走している。あの有名なウエスタンステイツ100マイルもその一つ。 だけど、2011年当時は、まだ、普通にロードを走るのが大好きな、アメリカ人の旦那様と10代前半の息子さんを育てる専業主婦の女性だった。 それが、ひょんなきっかけで、ウルトラトレイルレースと言う、山や森林など、大自然の中を

走っていて良かったと思うこと。

愛犬コーディを失くして、1ヶ月が過ぎた。 執筆活動が、中々、進まないのは、書こうとすると、コーディの事ばかりが頭に浮かぶからなのかな。ペットロスは勿論あるけど、飼い主が悲しむと、天国の愛犬も悲しむと言われているから、日々を元気に過ごしたいと思っている。だから、コーディに会いたいなぁ、と思った時、呟くのだ。 「悲しいんじゃないんだ。恋しいんだよ。」と。 また、今回も、つくづく走る趣味があって良かったと思っている。 最初にそう思ったのは、10年前の東北大震災で、石巻の実

わたしの居場所

昨夜、乳がんサバイバーになって以来、ボランティア活動をしている乳がん・卵巣がん、子宮がん患者支援団体SHARE(シェアー)のスタッフさんと、今後のセミナー企画についてZoomミーティングをした。 企画の一つがこちら↓。乳がんサバイバーに運動がとっても良い効果を示すというもの。乳がんになる前から、長距離ランナーの自分には、実に納得のいく内容である。 なぜなら、がんになった時、そして、外科手術・抗がん剤・放射線治療という身体に相当なダメージがある治療中、”走っていて良かった。

レースって、走れたら良いだけじゃなかったんだ。

9ヶ月ぶりに、リアルレースに出た。セントラルパーク4マイルレース。 2ヶ月前ぐらいから、NYC最大のレース主催団体NYRRが、試験的にレースを開催し始め、これはその第五弾。 以前は毎週5000人程度の規模で開催されていたレースが、今は300人程度に縮小。コラールも1つで、30分毎に振り分けられたスタート時間15分前程度に、検温と質問を受けた後、入る。そこでも、ランナーは前後2メートルのソーシャルディスタンスで並び、スタートは2名づつ、10秒おき。マスクは、オールタイム着用

「小説」Run for BEER

「あーっ!ビール、飲みてぇ!!!」 頭の中は、さっきからビールの画像で一杯だ。キンキンに冷えたグラスに注がれる黄金の液体。その上にふんわり乗っかる至福の泡。想像しだけで、うっとりとなる。だが、今は、うっとりしている場合じゃない。兎に角、後、10キロ、走り切らなくては。 走り切らなくては、と言いつつ、その実、ほぼ歩いている速度の俺。そりゃそうだ、もう70キロも山の中を、登ったり、降りたり、転んだり、起き上がったりしてんだもん。もっと、頑張れって?許してくれよ、俺は表彰台上が