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ランナーの話:「富士子さん」後編

運も実力のうちって言うけど、これはやっぱりおかしい。納得がいかない。

だって、シングルトラックで1時間以上も渋滞で一歩も進めず、1つ目、2つ目のエイドの関門は1時間延長されたのに、次のエイドが本来の時間の関門のままっておかしいでしょう?そこで800人のランナー達がアウトですよ。

2015年のUTMF100マイルレース後、富士子さんの中で、UTMFという大会への不信感が少し芽生えたようだ。

それと同時に、自分の実力を試したい。早く、ウルトラトレイル100マイルを走れる実力があることを証明したい。そんな気持ちがムクムクと沸き起こってきたようだ。

UTMFに拘るのを止めよう。富士子さんは、自分の執着をひとつ手放した。

翌年2016年7月、富士子さんは、Vermont 100(バーモント100マイル)という 歴史あるアメリカの100マイルレースのひとつに挑戦、見事、完走した。数年間、UTMF100マイルレース完走を目指し、練習に練習を重ねた結果が、実を結んだ瞬間だ。たとえ、それが自分の予定していたレースではなかったとしても。

そして、そこから富士子さんの100マイルを含む数々の過酷と言われるウルトラトレイルレース完走ラッシュは始まる。兎に角、心が強い。絶対、諦めない。レース主催者に止められない限り(時には、止められても)、進み続ける。つまり、決して諦めない女、”ネバーギブアップ富士子”なのである。

「ただただ完走したいってだけなんです。ゴールはいつも制限時間の30分ぐらい前に滑り込む感じで、全く、余裕ないんですけどねー。」

そんな風に、謙虚に、穏やかに笑って話す富士子さんは、とても素敵だ。誰と競っているわけでも、誰かに承認されたいわけでもなく、ただただ、”自分の好き”の為に、走っている。

さて、ところで、その後の富士子さんとUTMFの関係は、と言うと、これはもう腐れ縁と呼んでもいいでしょうか?

2016年9月:UTMF100マイル、豪雨にて44キロレースに短縮。完走したけど、当然、不完全燃焼。

2017年:9月開催は台風が多い為、開催時期を4月へ戻すことになったが、調整間に合わず、レース自体中止。

2018年4月:流石にもう走るのを諦めたら、この年は晴天に恵まれ、初UTMF挑戦のラン友はすんなり完走。(間違いなく、”やっぱり申し込むべきだったと”と悔しがったに違いあるまい。)

2019年4月:これが最後の挑戦との思いで再度トライ。天候はまあまあの予定が、まさかの大雪となり途中で中止。114キロで終了。もちろん、消化不良。

2020年4月:当然、申し込んだが、新型コロナパンデミックにてレース中止。

2021年4月:新型コロナパンデミックで、日本在住者のみで開催予定だったがレース自体中止。

来年2022年4月:開催する限り、もちろん、走る、とのこと。

富士子さんのUTMF100マイルの挑戦は、レース同様、ネバーギブアップだ。

(おわり)













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