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ランナーの話:「黒杉さん」前編

黒杉さんは、東北の宮城県石巻市に住むランナーだ。

この地名を聞いて、ピンと来た人もいるだろう。あ、ここは2011年、東北大震災の被災地だ、とか、もしくは、

あ、もしや、この人、黒リスの兄じゃない?と。

そうです、黒杉さんは、黒リスの兄。黒を強調するだけあって、色白の多い東北人の中ではブラックシープ的存在です。

本当は地黒ですが、ランニングで日焼けしているんだな、と最近は思われているかもしれません。つまり、結構、走っているわけです。

黒杉さんのランニング歴は、めちゃくちゃ薄っすらですが、長期間に及びます。過去を遡ると、中学・高校時代でしょうか?毎晩9時に、ロッキーという名前の柴犬ミックスの夜の散歩ならぬ夜ジョグが習慣化していたのを覚えています。その後、大学入学と共に上京し、ワンダーフォーゲル部に入部、元来の冒険・放浪癖が刺激されたらしく、大学を休学し、スーパーカブ(原チャリ)で、ヨーロッパ・中東方面を1年間旅していました。つまり、その時期は、バイクで走っていたようです。その後、日本帰国後はどうだったのか、定かではないですが、どうやら、たまに自分の脚でも走っていたようです。

30代でしょうか、黒杉さんは、地元石巻に戻ってきました。数年後、実家の稼業の小さい宿屋を継ぎ、40代で(2度目)の結婚もしました。その頃は、年に一度、石巻シーサイドマラソン(10キロ・5キロの部)の10キロの部に毎年参加しておりました。”自分が10キロ走れるかどうか”という、年に一度の健康診断程度に思っていたのかもしれません。そう言えば、家族がゴール付近で応援してくれた年、スタート時間を間違え、5キロの部と一緒にスタートしたにも関わらず(10キロの部は5キロの部より早いスタート時間)、5キロコースの折り返しポイントを無視して、ひとり予定していた10キロコースを周り、ゴール地点へ戻ってきた時には、ほぼ、最下位。後ろから迫る大会の車から、「もう少しです!」「頑張れー!」などのアナウンスをされつつゴール。応援している家族は、かなり恥ずかしかったのでしょう。その後、家族が応援に来ることはなくなったようです。

そんな非常にマイペースランナーだった黒杉さんが、ある時から、急にやる気を出し、フルマラソンを目指すと決めたのです。

(つづく)



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