獣医師の知識と技術をどう見極める?

〝先生〟と呼ばれる職業である獣医師の言うことは、どうも正しく聞こえるし、立派に見えることでしょう。

しかし、同じ獣医師でも知識と技術には雲泥の差があります。しかも単に経験年数だけではわかりません。

今回は、獣医師の知識と技術を探るキーフレーズについてお話したいです。

獣医師の知識の探り方

信頼できる、とは、飼い主さん一人一人が決めることで、相性や話しやすさ、価値観の差もあるから、正しい知識を持つ獣医師がみんなにとって良い獣医師であるとは限りません。知りすぎているとゆうことは、時に過度な診療を相手に求めすぎてしまい、窮屈なものだったりします。

しかし、知識のない専門家ほど迷惑なものはありません。こっちは分からないんだから信じるしかないし、不利益は常に飼い主とその動物に降りかかります。

ある程度の知識はある、が前提で、その上で相性が合うか合わないかを考えたいと思います。

知識を問うキーフレーズ〜この病気はどのくらい生きれますか?〜

怖い質問であるが、勇気を出して聞いて欲しいです。

ただし、この答えが出ない病気がたくさんあることも付け加えさせてください。

大事なのは、その先生なりの知識や経験を持ってある程度具体的な答えを返してくれるかどうか、です。

この質問に答えるには、いろんな条件があります。

1つ目、診断名がついていること

2つ目、その疾患の平均生存期間などの論文を知っていること

3つ目、その動物の他の疾患の有無や重篤度について把握していること

まだ病名を言われていない場合、まず病名を聞いて欲しいです。まだ診断の途中であると言われたり、この病気かこの病気かこの病気、、、とつらつらと多くの病名を挙げられる可能性もありますが、毎回の診察においてせめて仮診断をしながら診察とゆうものは行われるべきです。ここを曖昧にごまかす獣医師は知識(あるいは小動物臨床に望む姿勢)が怪しいと言わざるを得ません。

病名がわかった場合、多くの疾患では予後が分かっています。特に予後の悪いものであればあるほど論文が出しやすい(観察期間が短くて済む、注目されやすい、などの理由のため)傾向があるので、1年以内に半数が亡くなってしまうような重篤な疾患はさすがに答えて欲しいところです。

逆に予後良好な疾患は、その間に他の疾患で亡くなる可能性も高まるし、平均余命などはわからないこともあります。歯周病や関節炎、緑内症などもその子にとって大きな問題となる疾患ですが、命を取られるとは考えにくいような疾患もあります。そんな時はこの病気ではおそらく寿命にならないですよ、と言ってほしいところです。

こういった命に関わらない疾患の場合は、これからどんなことが起こりますか?という質問に変えて聞くと良いです。これからどうなるのか?どうするべきなのか?飼い主にとってはこれが一番知りたい情報のはずです。

予後について聞くときの注意点として、日本の獣医師はまだまだ論文発表に関して後進国であり、多くの論文が海外のデータに基づいている点です。国内では犬種が違ったり、安楽死に対する価値観も異なります。ですので、日本の子たちは論文で報じられている平均生存期間より長生きする傾向にあると思っています。自分の診た子の例では、、、と、そんなことも踏まえて伝えてくれる獣医師は知識だけではなく経験もあると考えて良いです。

また、木を見て森を見ず、とはよく言われるが、動物の全身を把握できず、病気だけを見てしまう獣医師も存在します。

わかりやすい病気に目がいってしまい、その子の全身状態を把握しなければ、気づかないうちに寿命が近づいていたり、不要な手術を実施してしまったり、動物や飼い主にとって悲しいことが待っています。高齢であればあるほどそのリスクは高くなります。(この点については良い獣医師をみつけるために非常に重要な考えなので、またいずれお話します。)

そこで、しっかりと全身状態を把握する必要があります。ここでは獣医師の経験も大事であるが、飼い主の何気ない変化を捉える注意力も大事です。日頃から我がペットの様子をしっかり把握してほしいと切に願います。

獣医師の技術の探り方

話してわかりやすい知識より、見えないところで発揮される技術の方が、飼い主から見て把握しづらいと思います。

正直、獣医師同士でも普段の交流(紹介しあうことやセミナー、勉強会などでのディスカッション)により、だいたい他の先生方の知識の幅や深さ、あるいは癖はわかってくるものですが、その人が手術が上手かどうかはよくわからないものです。

しかし、自分が様々な外科疾患に対応できるようになってきて、ようやく堂々と応えることができるようになった質問があるので紹介したいと思います。

技術を問うキーフレーズ〜何回くらい手術したことがありますか?〜

これは獣医師側からすると聞かれたらドキッとする質問です。

簡単なよくある手術(避妊、去勢、体表の腫瘤切除、歯石取りなど)は置いといて、命に関わる手術です、となった場合にはぜひこの質問をしてほしいです。

これまでに何回やっていたら合格点か、というとその答えは人によりけりです。私は同じ手術を(主体的に)5回経験したらだいたいのコツをつかめると思っていますが、20回やるまで不安という獣医師もいます。性格や度胸、手先の器用さによると思います。あなたが何回、は意外と信頼性にかけます。

正直、その人にとって初めての手術である場合もあります。

もっとも大事なのは、経験がある、ないではなく、正直にそれを答えることができるかどうかです。

あんまり経験がないので、、、もし希望なら院長に執刀してもらいましょうか?

などという答えはなんとも信頼できません。

私は初めてですが、今までの経験から、なんとか実施できると思っています。安心して任せてください。

そう言えるならOKだと私は思っています。(というより、多くの飼い主にこのことを許してもらいながらここまで成長させていただきました。)

一方で、この動物病院では年に1回もない手術です、というのはさすがに不安になります。年に1回もないことに対して、設備やセミナーへ投資するでしょうか?一部の外科好きな院長であれば、そういった投資をしっかり行なっていますが、多くはそうではありません。

そして、年に1回もないのであると、スタッフが慣れていないということであすから、執刀医が何回も経験したことがあっても、周りの動きが期待できません。助手、麻酔、外回り、いざという時のリズムが崩れます。

つまり、このキーフレーズは、この病院では年に何回くらい手術を行なっていますか?そして、その中であなたが執刀したのは何度くらいですか?と聞くのがおすすめです。

この病院では月1回くらいです、なら普通に任せれるのではないでしょうか。おそらくこれを読んだ獣医師も、確かに、それくらいの手術はそんなに緊張感もなく乗り越えるな、、、という頻度だと思います。

えっ、そんなに少ないの!?と感じるかもしれません。はっきりいって、よくある手術と比較して、毎日のように肝臓腫瘍を切除しています、だの骨折を治しています、などは一部の専門の獣医師に限られます。人のように毎日同じ手術をしているわけではないので、このくらい少ないのが普通なのです。

もちろん、二次病院などでしか実施できないような大きな手術に関しては、大きな動物病院でも年に1度、ということもあります。かかりつけにて、年に1度くらいしか、、、と言われた場合は、他にもっとたくさん実施している病院があるか聞いてみてほしいです。(逆に紹介された先ではあまり聞かない方が良いかもしれないです。かかりつけ医はそこが最善と考えて紹介しています。)

こんなことを聞いたら嫌な顔されるかな、試しているみたいで警戒されるかな、と不安になるかもしれませんが、それくらい我がペットを大切に思い、慎重になることは普通のことです。そして、自分に経験がなければ、もっと経験がある先生を紹介するのもごく一般的なことです。


さて、知識を問うキーフレーズ、この病気はどのくらい生きれますか?と技術を問うキーフレーズ、何回くらい手術したことがありますか?を紹介しました。

これくらいの質問に答えれない獣医師は、器の小さい獣医師だと割り切って、我が子の一大事だと思えるときはしっかり聞いてほしいと思います。

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