時間の感覚
私は生まれつき重度の口唇口蓋裂だったので、0歳から20歳までの20年間のうちでたぶん10回以上は入院して手術をしてきました。
手術が終わるとたいていしばらく動けずにベッドの上でただ天井を眺めているだけになります。
そうすると時間の感覚が無くなっていくのです。
皮膚が突っ張るような痛みが出たり、消えたり。
顔周りに残る違和感を感じたり、いつの間にか気にならなくなったり。
誰か話しかけているけど、顔中包帯ぐるぐる巻きでうっすらとしか見えていません。
自分の体に何が起きてるんだろう?と思いながら、ベッドの上で長い時を過ごしています。
時間が経っているという普段当たり前にある感覚さえ無くなってしまいます。
自分が寝ているのか起きているのか、それさえもわからなくなってきます。
術後、3、4日経つと、少しずつ体力も回復してきて起き上がれるようになります。
そこでようやく時間の感覚を取り戻すのです。
時間の感覚が無いというのは死んでいるのと同じだな、とあるとき思いました。
手術をするというのは、お医者さんも大変ですが、受けるほうも、ものすごく体力を消耗するようです。
特に全身麻酔で手術をしたときは目が覚めたとき頭が真っ白で、ふわふわと天国にでもいるかのような感覚でした。
だんだん意識が戻ってきて、猛烈な痛みで現実に叩きつけられる、毎回そんな感覚を味わってきました。
私は何も悪いことをしていないのに、どうしてこんな痛い目に合わなければならないのか。
人は自分の人生を選んで生まれてくるなどと言いますが、私、絶対こんな人生選んでない、と心の底から思っていました。
それでも何度も何度も入院と手術を繰り返し、成長していくにつれて、これは自分にしかできない体験だと受け入れられるようになってきました。
嫌になって逃げ出すこともできたかもしれません。
手術なんか受けたくない!とゴネることもできただろうに、覚えている限りではそういうことを言ったことがありません。
結局、いつの間にか自分の人生を自分で選んでいたんだな、と今になって思います。
時間の感覚が無くならないように、これからも毎日をしっかりと生きていかないといけないな、と思います。
画像はアヤネさんからお借りしました。
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