小説noteでお花見! 『4月の桜』
yucaさんがせっかく提案してくれた企画なので、お付き合いさせて頂くことにしました。ちょうど良い写真もありましたし。まぁ、小説より写真をお楽しみください。
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小説『4月の桜』
風がひとひらの花びらを運んできた。
私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。
「入学式に桜の花が見られて良かったわね」
と妻が言った。
息子のランドセルに着いた花びらは可愛いから
そのままにしておこう。
21世紀の中頃は地球温暖化とやらのせいで、
入学式の桜はきれいな新緑だったそうだ。
今日、2100年の4月5日に東京で桜の花が見られるのは
昨年亡くなった私のおじいさんのおかげだ、
ということを妻は知らない。
「日本の優秀な技術者達が人工光合成システムを
開発してくれたおかげだね」と妻に言いつつ
私は、おじいさんの優しい笑顔を思い浮かべた。
「おじいさん、ありがとう」
と心の中で感謝し、満開の桜を眺めた。
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【後書き】
シンプルで短い文章を心がけて書いてみました。読む人がシンプルな文章から情景をイメージできて、主人公の気持ちを感じ取れればいいな、と思いつつ。
しかし、そんなに上手く書けたとも思えないので、少し補足します。
21世紀の中頃、つまり2050年頃に地球温暖化はピークを迎えているという想定です。東京の桜の開花は3月の初め頃、満開は3月の中旬頃なので、4月の入学式の頃の桜は新緑がきれいな状態です。
また、その頃、私(主人公)のおじいさんは企業の技術者で、会社の仲間たちと大気中の二酸化炭素を減少させる画期的なシステム(設備)を開発しました。その後、そのシステムが世界中で活用されるようになり、大気中の二酸化炭素濃度も徐々に減少し、2100年頃には気温も温暖化以前の状態に戻っていきました。
そして、2100年の4月5日、私(主人公)は、妻と息子と3人で小学校の入学式。私(主人公)は校門近くの桜を見て、昨年亡くなった優しいおじいさんの笑顔を思い出し、改めて感謝しました。自分を可愛いがってくれたことと息子の入学式に桜の花が見られたことに対して。
ちなみに今年、2021年の東京の桜開花日は3月14日でした。満開になるのは約1週間後の3月21日頃と思われます。おそらく3月末までには桜の花は散って、入学式の頃は新緑になりそうですね。
※21世紀とは、2001年〜2100年です。
※温暖化が進み過ぎると、逆に桜の開花が遅れる場合もあります(下記の記事「ソメイヨシノの開花と地球温暖化の話」を参照下さい)。
【yucaさんの春企画/小説noteでお花見】
最初と最後の決められた文章(下記の太字部分)の間に自分の文章を入れて話を作る。桜の写真は自分が撮ったものを使用。
風がひとひらの花びらを運んできた。
私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。
[自分の文章]
満開の桜を眺めた。