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短歌のきろく③

2020年1月〜掲載短歌や歌会詠草を書き残します。

【2020年掲載短歌】黒乃響子

第5回 富士山大賞 佳作〈2020/12/28〉
山小屋のにぎやかな夏の想い出が灯らず富士もさびしいだろう

東京新聞 東直子 選〈2020/12/27掲載〉
玄関の家族写真のきみの瞳に映る回転木馬のひかり

東京新聞 東直子 選〈2020/12/6掲載〉       
こうもりが飛びたったあとの洞窟の水音、耳なり、やまない鼓動

■第69回 東直子『短歌の時間』 選外佳作公募ガイド 12月号
採血後の三分間の砂時計わたしの今が降りつもりゆく

東京新聞 東直子 選〈2020/10/4掲載〉
点滴のしずかにおちる病室のカーテン越しにきくすすり泣き

東京新聞 東直子 選〈2020/9/13掲載〉
深呼吸すればふくらむ竜骨のような胸からかすかな海鳴り

角川歌壇 10月号 田宮朋子 選 佳作〈2020/9/25〉
必要のない人だったのだろうか解雇の日から降りつづく雨

さわらび歌会 題詠「食」〈2020/9/19〉一席
しば漬けが時計のようにただ響くだけのしずかなひとりの食事

夕涼み短歌会 テーマ:さんずいの入った漢字の歌〈2020/8/22〉
不機嫌にとぎれて消える蝉の声 約束のない夏の夕ぐれ

笹欄歌会 詠草〈2020/6/14〉
擦りきれの尾崎豊のカセットは15歳から捨てられぬまま
エンディングテーマも流せないままにライブハウスが閉店してゆく

■東京歌壇 佐佐木幸綱 選 特選一席 6月度月間賞〈2020/6/7掲載〉
オンライン朗読会は春の日のひかりをはこぶ 聞こえていますか

■角川歌壇 6月号 東直子 選 佳作〈2020/5/25掲載〉
足跡がひたひたのこる船底は逆さまになりゆっくり沈む

■角川歌壇 6月号 内藤明 選 佳作〈2020/5/25掲載〉
台本を演じるように丁寧にわらう道化の母の大声

■東京歌壇  佐佐木幸綱 選 特選ニ席 4月度月間賞〈2020/4/19掲載〉
菜の花の丘が車窓にひろがって絨毯のように飛びさってった

■ロッポンギ歌会 〈2020/5/18〉
階上の生活音と同居してなまぬるい水をしずかに飲みほす
ライブ前に公園通りの歩道から見あげた夕陽の淡い残像

■角川歌壇 4月号 東直子 選 佳作〈2020/3/25掲載〉
あの道を間違えなければ今どこにいるのだろうか 雪がつめたい

■東京新聞 東直子 選〈2020/3/15掲載〉
恥じらいをなくしてしまった薄皮が水にさらされる湯むきのトマト

■東京新聞 東直子 選 特選二席〈2020/1/26掲載〉
熊よけの鈴の聞こえる東京駅構内をゆくのっそりとゆく

■第11回 角川全国短歌大賞 東京新聞賞題詠部門「会」
会いたくて会えない溜息すい込んだアコーディオンの白い旋律

■第21回NHK全国短歌大会入選〈2020/1/25〉
冬空の窓にまどろむ猫のように眠るコタツの帰省の息子

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