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黒田研二
2023年7月31日 08:10
6.女の勇気に拍手!(14)4(承前)「ドアって……一体、どこに繋がっているの?」「それはわからないけど」 由利子の問いかけに対してそう答えたあと、瞳はドアノブに手をかけた。 しかし、ノブはまったく動かない。「駄目。鍵がかかっているみたい……あ」 ……鍵? 瞳は自分の手の中にあるものを確認した。 たくさんの鍵がぶら下がったキーホルダー……。 もしかしたら、ドアを開けられるかもし
2023年7月30日 08:29
6.女の勇気に拍手!(13)3(承前)「西龍組の奴らは、俺たちの仕業だと思うだろうな」 立澤は窓の外の夜景を見ながらいった。「おそらくそうでしょうね。そんなことはしていないのに」「いや、否定もできねえだろう。もしかしたら、俺の部下が独断で行動して末木を殺したのかもしれねえしな」「あり得ますね。末木はこの組を裏切った男ですから」「ああ……」 窓にかかるカーテンを閉じたあと、立澤は深い
2023年7月29日 07:30
6.女の勇気に拍手!(12)3「全員、集まったな」 西龍統治は皆の顔を見回しながらいった。「末木が死んだ」 誰も騒ごうとはしない。 ただ、殺伐とした空気だけが蔓延していく。 統治は先を続けた。「殺ったのは立澤組の奴らに違いねえ」「立澤組め……汚え手を使いやがって」 組員のひとりがそう吐き捨てる。「明日の朝――」 統治はそこでいったん言葉を止めた。 皆はじっと彼の顔を見つ
2023年7月28日 08:11
6.女の勇気に拍手!(11)2(承前)「お恥ずかしい話ですが……」 中西は宙を仰ぎながらいった。「僕は警察の奴らに、すべてしゃべるつもりでいました」「だが、君はなにもいわなかった」「ええ……急になにもいえなくなってしまったんです」 情けない表情で答える。「僕のひとことで、あの娘は兄を失う……幸せを失う……そう思ったら言葉がなにも出てこなくなってしまって……」「しかし、今のままでは
2023年7月27日 08:46
6.女の勇気に拍手!(10)1(承前)「……瞳さん」 由利子が弱々しい声を発した。「これは一体、どういうことなの? 私……あなたの部屋で気を失って……気がついたらこんなところに閉じこめられていたんだけど……」「説明はあとでします。今は早く逃げましょう」 タイミングよく、由利子のロープがほどけた。「さあ、早く」「え……ええ」 瞳にうながされるまま、由利子は立ち上がった。「おっと、
2023年7月26日 08:36
6.女の勇気に拍手!(9)1(承前) 向きを変え、一目散に走る。 一刻も早く由利子さんを助け出して、ここから逃げよう。 瞳は中央の倉庫へと向かった。 もし、無事にここから逃げ出すことができたら…… 荒い呼吸を繰り返しながら、ようやく決断する。 逃げ出すことができたら、すべてを警察に打ち明けよう。 そうしなければ、どんどんみんなが不幸になってしまう。 瞳は倉庫の扉に手をかけた。
2023年7月25日 08:12
6.女の勇気に拍手!(8)1(承前)「誰だ!?」 長崎の声が聞こえた。 ……しまった。 見つかったかもしれない。 だが、瞳は逃げようとしなかった。 こうなったらやけくそだ。 ドアの横へと走り、息を殺して長崎が出てくるのを待つ。 手にはしっかりと薪を握った。 防犯ベルが止まる。 小池たちが止めたのだろう。 となると、彼らはまもなくここへ戻ってくるはずだ。 それまでに決着をつ
2023年7月24日 12:03
6.女の勇気に拍手!(7)1(承前) 怖くないの? 自分に問いかける。 怖い……とっても怖いよ。 それが正直な答えだった。 だったら、どうしてこんな危険なことをするの? じゃあ、どうしろっていうの? このまま指をくわえて静観していろとでも? 私はもう誰も不幸にしたくない。 そのためには自分から行動しなくては。 瞳は力強く頷いた。 ただ悩んでいたって、なにも解決はしないのだから
2023年7月23日 23:20
6.女の勇気に拍手!(6)1(承前) 星の美しい夜だった。 あたりを見回し、人がいないことを確認すると、瞳は隣の倉庫へ向かった。 由利子さんを助けなくては。 彼女はおそらくそこに幽閉されているはずだ。 足音を立てぬように注意しながら移動する。 鼓動が激しい。 汗が止まらない。「あ……」 瞳は声を漏らした。 隣の倉庫にの扉には、南京錠がかけられていた。 力任せに引っ張ってみた
2023年7月22日 06:51
6.女の勇気に拍手!(5)1(承前) なんとかしなくては。 瞳は脳をフル回転させた。 とにかく、今は一刻も早くここから逃げ出さなくちゃいけない。 床に散らばったガラスの破片を、ほとんど自由の利かない手でつかむ。 手首を縛っているロープを切ることができれば……。 瞳はロープにガラスを当て、左右に動かした。 手首を見ることができないため、うまく切れているかどうかはまったくわ からない。
2023年7月21日 09:17
6.女の勇気に拍手!(4)1(承前)「おまえが末木を殺したときに使ったナイフをあいつらに持たせ、警察に通報する。そして、あいつらよりひと足先に西龍組の事務所に行き、指紋のついたワイングラスを置く」 長崎は喉を鳴らして笑った。「完璧だろう? 黒川」「でも……」 黒川と呼ばれた男は不安げにいった。「あいつらには末木を殺す動機がありません」「動機? そんなものはどうにだってなるさ。末木は
2023年7月20日 10:23
6.女の勇気に拍手!(3)1(承前) 倉庫の外から数人の足音が聞こえた。「どうした一体?」 長崎の声が耳に届く。 瞳は防犯ベルの鳴り響く中、彼らの会話を聞き取ろうと耳を澄ました。「まさか、春日と中西が戻ってきたんじゃねえだろうな」「それはないでしょう。今頃、ふたりは警察で取り調べをうけているはずですから」 警察で取り調べ? やはり、なにかあったんだ。 瞳は胸を押さえた。「おい
2023年7月19日 10:44
6.女の勇気に拍手!(2)1(承前) 瞳はバランスを崩さないように、ゆっくりと立ち上がった。 両手は背中の後ろで縛られているので、こけたりしたら大変だ。 窓のそばに近づく。 三日前、彼女は頭上に見える窓ガラスを割った。 窓はそのまま修理されていないようだ。 倉庫内は埃っぽい。 おそらく掃除もしていないだろう。 だとしたら、窓の下にはあのとき割ったガラスの破片が落ちているに違いない
2023年7月18日 22:40
6.女の勇気に拍手!(1)1 風の音で瞳は目を覚ました。 あたりは真っ暗でなにも見えない。 おそらく夜なのだろう。 ……ここはどこ? 瞳は記憶を探った。 アパートを訪ねてきた由利子と口論をしているとき、小池が部屋に押し入ってきたことを思い出す。 いきなり口を押さえられ、鼻の奥がつんと痛くなったと思ったら、そのまま気を失ってしまったのだった。 ……そうか。 一度忍びこんだことのあ