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MAD LIFE 078

6.女の勇気に拍手!(4)

1(承前)

「おまえが末木を殺したときに使ったナイフをあいつらに持たせ、警察に通報する。そして、あいつらよりひと足先に西龍組の事務所に行き、指紋のついたワイングラスを置く」
 長崎は喉を鳴らして笑った。
「完璧だろう? 黒川」
「でも……」
 黒川と呼ばれた男は不安げにいった。
「あいつらには末木を殺す動機がありません」
「動機? そんなものはどうにだってなるさ。末木は暴力団の組員なんだぞ。末木に金を強請られていたとか、暴力を奮われていたとか、いくらでもでっちあげられる」
「そうですね……」
 黒川の声は弱々しいままだ。
「どうした? まだ心配事でもあるのか?」
「末木が死んだってことは……俺たちもう、どうあがいても西龍組には入れませんよね?」
「ああ……そういうことになるな」
「すみません。俺のせいで……」
「まあ、どっちにしろ、末木は俺たちの話にまったく耳を貸そうとしなかったからな」
「でも……もう立澤組に戻ることもできません」
「少し早まっちまったみたいだな。立澤組の組長と意見が合わず、組を飛び出したまではよかったが……すぐに西龍組へ入れると思ったのが間違いだった」
「以前、末木が立澤組を抜けて、西龍組へ入ったとき、俺たちはそれを黙って見逃がしてやったのに……。畜生、末木の奴! 俺が末木に『お前のコネで俺たちを西龍組に入れてくれ』と頭を下げたら、『そんな面倒なことやってられるか』とぬかしやがった。『どうしても入りたいのなら、それなりの金を用意しろ』と。だから俺はかっとなって……」
 ふたりの会話は次第に小さくなり、やがてなにも聞こえなくなった。
 小屋に戻っていったのだろう。
 しかし、瞳はすべてを悟った。
 立澤組を抜け、西龍組へ入ろうとした長崎ら。
 そこで起こったいざこざ。
 黒川は末木を殺害した。
 そして、その罪を洋樹と中西のふたりにかぶせようと……。
 瞳は焦った。

(1985年10月29日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ


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