MAD LIFE 088
6.女の勇気に拍手!(14)
4(承前)
「ドアって……一体、どこに繋がっているの?」
「それはわからないけど」
由利子の問いかけに対してそう答えたあと、瞳はドアノブに手をかけた。
しかし、ノブはまったく動かない。
「駄目。鍵がかかっているみたい……あ」
……鍵?
瞳は自分の手の中にあるものを確認した。
たくさんの鍵がぶら下がったキーホルダー……。
もしかしたら、ドアを開けられるかもしれない。
瞳は手探りで鍵穴を探し、そこに鍵をひとつずつ差しこんでいった。
「……どう?」
横から不安そうに由利子が訊く。
「開きそう?」
「なにがなんでも開けてやるんだから」
そう口にしながら、八つめの鍵を差しこむ。
右にひねると、手ごたえがあった。
恐る恐るノブを回す。
ドアは内側に開いた。
同時に、埃っぽい空気が流れこんでくる。
ドアの向こう側は真っ暗でなにも見えない。
しかし、瞳はためらうことなくドアの先へと進んだ。
身体がふわりと宙に浮く。
どうやらドアの先は下りの階段になっていたらしい。
「きゃっ!」
悲鳴があたりに響き渡る。
階段を踏み外した瞳は、そのまま転げ落ちていった。
階段を転げ落ちていく音。
瞳の悲鳴。
そのあとには静寂が訪れた。
「瞳さん!」
由利子は叫んだ。
「瞳さん、大丈夫なの?」
ドアに駆け寄り、大声を張りあげる。
彼女の声はコンクリートの壁に反射してこだました。
瞳からの返事はない。
怪我をしたのかもしれない。
早く助けなければ。
由利子は意を決し、ドアの向こう側へと飛びこんだ。
瞳と同じように足を滑らせ、階段から転落する。
(1985年11月8日執筆)
つづく
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